Presentations -
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糖尿病患者に対するDPP-4阻害薬の併用療法の有効性に関する調査
奥隅 舞、茂木 肇、木村 光利、宮川 高一、森 貴幸、荻原 政彦
埼玉医療薬学懇話会 第33回学術研究講演会 埼玉医療薬学懇話会
Event date: 2013.06
Language:Japanese Presentation type:Oral presentation (general)
Venue:大宮法科大学院大学
【背景・目的】わが国における糖尿病患者数は、平成19年度では約890万人(15.3%)、平成23年度でも約9103万人(15.7%)であり、国民の約1/7が罹患している国民病の一つである。糖尿病治療の目標は、症状の改善とともに、合併症や増悪を防ぎ、健常人と変わらない日常生活の質(QOL)を保ち、寿命を確保することである。しかし、近年、偏った血糖コントロールに伴い、低血糖や体重増加、さらには死亡率を増加させる可能性が指摘されている。DPP-4阻害薬は、上記の問題点を解消することができると期待されている薬剤であり、現在臨床で広く使用されている。そこで今回、糖尿病患者の検査値を基に、処方されたDPP-4阻害薬や他の糖尿病用薬との併用効果について調査した。さらに、その結果を生かしたより最適な薬物治療について考察した。
【方法】調査対象期間は、クリニックみらい国立、くにたちウラン薬局における平成23年8月~平成24年11月の16ヶ月間で、調査項目は、電子カルテ、紙カルテ、電子薬歴から年齢、BMI、検査値および処方薬であった。対象患者は、クリニックみらい国立、くにたちウラン薬局共に利用されている1型糖尿病患者28名、2型糖尿病患者119名、合わせて147名を対象とした。
【結果】HbA1cとBMIの関係は、1型糖尿病患者は変化が見られなかったが、2型糖尿病患者ではHbA1cが高くなるにつれてBMIも高くなった。各薬剤による治療開始時から治療時のHbA1cは低下傾向がみられ、その低下率は、シタグリプチン単独群0.5%、アログリプチン単独群0.1%であった。また、2剤併用群ではシタグリプチン・グリメピリド併用群0.8%、シタグリプチン・インスリン併用群0.2%、アログリプチン・グリメピリド併用群0.2%であった。一方、3剤併用群では、シタグリプチン・グリメピリド・ピオグリタゾン併用群1%、アログリプチン・グリメピリド・ピオグリタゾン併用群0.2%、シタグリプチン・グリメピリド・α-GI併用群2%であった。しかし、アログリプチン・グリメピリド・α-GI併用群に至っては0.1%上昇した。
【考察】2型糖尿病患者ではHbA1cとBMIに正の相関が認められ、また1型、2型糖尿病患者ともにコレステロールとBMIにも正の相関が認められた。これらのことから2型糖尿病ではHbA1cとコレステロールの値も密接に関わっていることが考えられた。また、2型糖尿病患者に対して、特にシタグリプチン・グリメピリドの併用で、HbA1cの平均を0.8%低下させ、HbA1cの数値が高い患者に変化が大きかったことから、特にHbA1c値が高い患者にシタグリプチンの併用が有効と考えられた。 -
退院処方の変更から見えてくるリスクについて
武笠 裕優、新津 京介、木村 正彦、大塚 潔、堀口 久光、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
埼玉医療薬学懇話会 第32回学術研究講演会 埼玉医療薬学懇話会
Event date: 2012.07
Language:Japanese Presentation type:Oral presentation (general)
【背景・目的】薬剤によるヒヤリハット事例が昨今問題となる中、自治医科大学附属さいたま医療センター(以下、当院)においても、調剤過誤(インシデントレポート)が数多く挙げられいる。中でも昨年度1年間の薬剤師による調剤過誤のうち、処方変更に係るものが総数244件中77件あり、全体の1/3と多くを占めている。処方変更に伴う再調剤は変更点の見落とし等が起こりやすいため、新規の調剤に比べてミスが起こりやすい。特に退院の前日・当日の処方変更は時間的な余裕が少なく、ミスが増える可能性が高い。従って、リスク管理の観点から処方変更の実態を把握し、上記のような調剤ミスや過誤を減らすための対策を講じる必要がある。
本研究では、今日退院処方の変更率及び処方変更内容・変更時期を調査することにより、再調剤におけるリスクを検証し、その結果を基にリスク回避(あるいは軽減)などの対策(方法)を考察した。
【方法】平成23年4月~7月の4ヶ月間の当院15病棟における退院薬を処方された患者(総数:2648名)を対象に退院処方の変更率・変更時期及び変更内容の詳細(ハイリスク薬などの薬の種類とその件数・内訳)についてカルテ調査を行った。
【結果】調査を行った4ヶ月間の間に退院処方が変更された患者は、2648名中1482名であった。病棟別変更率の多くは30-50%前後であったが、中でも、心臓外科、循環器内科、内分泌・呼吸器内科の3病棟は60%を超える変更率だった。この3病棟のうち、循環器内科について詳しく調査したところ、処方変更が生じた241件のうち、薬剤の追加が171件(55.7%)と最も多く、次いで薬剤日数変更48件(15.5%)、薬剤削除27件(8.7%)、用量変更26件(8.4%)、薬剤変更が13件(3.9%)、1包化12件(3.9%)、用法変更7件(2.3 %)という結果だった。また、この追加薬剤の中、ハイリスク薬が21.5%と追加の全体の約2割を占めており、その内訳は、抗凝固・抗血小板薬23件(9.3%)と最も多く、次いで抗不整脈薬14件(5.7%)、糖尿病治療薬(インスリン製剤7件を含む)13件(5.3%)、その他(ステロイド・ジゴキシン製剤・抗てんかん薬各1件)3件(0.4%)だった。追加された薬剤の残りの約8割が、一般薬で、その内訳は硝酸薬が110件(45%)と最も件数が多く、次いで解熱鎮痛薬16件(6.5%)、下剤9件(3.7%)、ACE阻害・ARB8件(3.3%)、胃酸分泌抑制薬・脂質異常症治療薬各7件(2.8%)という結果であり、一般薬ではニトログリセリン舌下錠の追加が約5割を占めるという特徴的な結果を示した。
【考察】循環器内科では、追加薬剤の内訳の中でニトログリセリン舌下錠が全体の45%を占めていた。これは、主治医が退院薬を処方する際、入院時の定期処方をDo処方(前回と同じ処方)として出してしまうことからニトログリセリン舌下錠のような頓服薬が退院処方から漏れてしまうものと考えらえる。薬剤師が病棟に常駐するようになれば、医師が退院処方を出す前に、必要な患者に対してニトログリセリン舌下錠を処方するように進言できるようになるので、追加の件数が減り、インシデントリスクも軽減することができ、全体の処方変更率も下げられるものと考える。