Presentations -
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健康サポート薬局における健康相談会の有用性に関する調査研究
山本雅人、茂木肇、荻原政彦、臼井達洋、木村光利
埼玉医療薬学懇話会第 38 回学術研究講演会 埼玉医療薬学懇話会
Event date: 2018.07
Language:Japanese Presentation type:Oral presentation (general)
Venue:日本薬科大学
【背景、目的】厚生労働省は、医薬分業の原点に立ち返り、日本再興戦略(平成25年6月14日閣議決定)において、「薬局を地域に密着した健康情報の拠点として、一般用医薬品等の適正な使用に関する助言や健康に関する相談、情報提供を行う等、セルフメディケーションの推進のために薬局・薬剤師の活用を促進する。」との内容が盛り込まれた「健康サポート機能を有する薬局(健康サポート薬局)」について提起した。この薬局は、地域住民が気軽に参加できる健康相談会の実施を活動の一つとしている。健康相談会では、骨密度測定、血糖値・コレステロール測定や血管年齢測定を行い、その結果に基づいて、薬剤師や栄養士が薬や健康食品・サプリメントなどの相談を行うとされているが、健康相談会の中で、具体的にどの項目が地域住民に関心があるのかは明確になっていない。そこで本研究では、健康相談会に来局した人が、どの項目に関心があるのかを調査し、どのようにすれば、健康に関する意識が高まるのかを比較検討した。
【方法】有限会社富士薬局主催で行われた健康相談会の参加者を対象とし、研究者が来局者にアンケートを依頼した。アンケート調査は、本研究目的を説明し、理解して同意が得られた参加者に無記名で、その場で記入してもらった。アンケート内容は年代、性別、日頃気をつけていること(血糖値、血圧、コレステロール、食事や睡眠)及び実施した項目の興味深さ(0~5の6段階評価)を設けた。
【結果、考察】本調査において、参加者48人のうち、栄養相談実施者数25人、血管年齢測定実施者数43人、骨密度測定実施者数35人となり、栄養相談の実施者数は他と比べて低い結果となった。これは、薬剤師もしくは栄養士による直接的な相談となるため来局者が相談することを躊躇してしまい、その結果、実施者数が少なくなったと考えられる。次に、各実施項目の興味深さをスコア化しその平均をとった。栄養相談のスコアは1.85点であったのに対し、血管年齢測定4.23点、骨密度測定3.25点、脂質測定3.00点となり、栄養相談のスコアは他の項目と比べて低い結果となった。これは、栄養相談を行う上での待ち時間が要因で興味深さが低くなったとも考えられる。次に、日頃気をつけていることと、相談会で実施した項目のスコアの間に関連性があるのかを調査した。血糖値を気にしている人のスコアは、血圧やコレステロールを気にしている人のスコアに比べて、栄養相談、血糖測定、脂質測定、血管年齢測定に対するスコアが高い傾向が見受けられた。これは、糖尿病治療による通院の中断率が高血圧治療、高脂血症治療による通院の中断率に比べ有意に低いことと相関しており、参加者は糖尿病に対する関心度が高いため、上記の様な結果になったと考えられる。 -
カルシウム拮抗薬とグレープフルーツジュースの相互作用に関する パンフレット配布による教育効果の検討
森崎 佳菜、蛭田美和、茂木肇、中村梨絵、木村光利、白石卓也、荻原政彦
第23回埼玉県薬剤師会学術大会 埼玉県薬剤師会
Event date: 2017.11
Language:Japanese Presentation type:Oral presentation (general)
Venue:埼玉県 県民健康センター
【背景・目的】薬剤師は、患者に医薬品や疾患に関する知識を付けてもらうために、パンフレットなどの紙媒体を用いた啓発活動を行っている。この方法は、患者に様々な情報を効率的に提供できるが、一方的な提供法であるが故に、患者が勘違いをせず、正しい知識を得られているのか疑問が残る。そこで、今回はカルシウム拮抗薬(以下、CCBと略す)とグレープフルーツジュース(以下、GJと略す)の相互作用を題材としたパンフレットを作成し、これを配布することによる教育的効果を検討した。
【方法】2013年11月18日から12月28日の40日間に、薬局アポック三芳店に来局した患者の中で、CCBが処方され、かつ、本研究の目的に同意した患者51名を対象とした。対象者には、先ず、CCBとGJの相互作用に関する問題に答えてもらい、どの程度、知識を有しているか事前に確認した後、CCBとGJの相互作用に関するパンフレットを配布した。その1か月後、同じ対象者に同じ問題を出題し、パンフレット配布により正答率がどの程度変化したかを測定した。なお、パンフレット配布前後の各回答項目の比較は、カイ2乗検定を用い、危険率5%未満を統計上有意とした。
【結果・考察】問題は全部で3問出題(①GJ併用による引き起こされるCCBの降圧作用の増強に関する問題、②GJと同様に注意を要する柑橘類に関する問題、③GJのCYP3A4阻害持続時間に関する問題)した。パンフレット配布により全ての問題において、有意な正答率の上昇が認められた。一方、③GJのCYP3A4阻害持続時間に関する問題に関して、誤答である「2時間」と回答した対象者は、パンフレット配布前後で39.2%から35.3%と大きな変化が認められたなった。これは、対象者(患者)間で「2時間も過ぎれば、GJは消化・吸収され胃の中にはなくなり、GJは消失したはず」と誤った知識が定着したため、パンフレット配布による教育効果が得られなかったと考えられる。このように、患者が誤った先入観を有している場合は、パンフレットによる教育効果が乏しい傾向にあり、パンフレット作成時は、予め患者の先入観を把握する必要があると考えられる。 -
リウマトレックス®による間質性肺炎を例にした重篤な副作用の情報提供に対する非関節リウマチ患者の意識調査
仁宮 勇人、遠藤 栞、茂木 肇、木村 光利、小松 由美子、荻原 政彦
埼玉医療薬学懇話会第 37 回学術研究講演会 埼玉医療薬学懇話会
Event date: 2017.07
Language:Japanese Presentation type:Oral presentation (general)
Venue:東大宮コミュニティセンター
【背景・目的】薬剤師は、薬剤師法第25条の2により情報提供と薬学的知見に基づく指導の義務が課せられている。特に副作用に関する説明は重要であり、副作用の発症率が極めて低い場合でも、患者に適切に説明し、患者から理解と納得を得ることが肝要である。一方、この副作用の説明が、患者の副作用に対する恐怖心を助長し、コンプライアンスの低下を招く恐れがあることも事実であり、現場の薬剤師は、服薬指導の際、患者に誤解を生じさせないよう伝え方に気を配る必要がある。本研究では、リウマトレックス®(メトトレキサート)による間質性肺炎を例にとり、仮想のリウマチ患者が重篤な副作用を伝えられたとき、患者のコンプライアンスにどのような影響を及ぼすのかをアンケートにて調査を行った。
【方法】2015年1月から4月に株式会社ヘルスアップしもふり薬局に来局した患者の中で、本研究の目的に同意した155名を対象とし、対象者には「慢性関節リウマチという病気を患ってしまい、治療のためリウマトレックス®という抗リウマチ薬を服用することになった。」と仮想のリウマチ患者になってもらい、パンフレットを用いて間質性肺炎について説明した。説明後、リウマトレックス®を服用することに対する意識の変化などをアンケート調査をし、その結果を年代別(20~30歳代、40~50歳代、60歳代以上)に分け、それぞれ比較した。なお、実際にリウマトレックス®を服用している患者の影響を避けるため、整形外科領域に受診している患者は対象外とした。
【結果、考察】間質性肺炎の説明を受けた後、リウマトレックス®を服用することに対する患者の意識として、20~30歳代は他の年代と比較して「しっかりとしたデータがあるので安心して服用する」が38.0%と有意に多く、若年層は間質性肺炎に対する抵抗性は低く、リウマトレックス®服用に対しても積極的な意見が多い傾向が認められた。その一方、60歳代以上は「心配なのでできれば服用したくない」といった服薬に対して消極的な意見が35.3%と有意に多く認められた。これらの結果より、年代が上がるにつれて重篤な副作用に対する抵抗性が高くなり、高年齢層の患者はコンプライアンスの低下を示したと考えられる。また、上記のようなリウマトレックス®服用に対して消極的な意見を示した60歳代以上の患者は「しっかりとしたデータがあっても副作用は怖い」という意見が51.1%と多かった。すなわち、60歳代以上の患者は、加齢による処方薬剤数の増加や薬物動態学的変化により副作用を経験することが多くなるため、副作用に対する警戒心が若年者より高いと考えられる。 -
病院における非高齢者のカルシウム拮抗薬服用後の胃腸障害発症率に関する調査研究
星野 広太、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
埼玉医療薬学懇話会 第36回学術研究講演会
Event date: 2016.07
Language:Japanese Presentation type:Oral presentation (general)
Venue:さいたま市文化センター
【背景・目的】Ca拮抗薬は降圧薬及び狭心症治療薬として、高頻度に使用されている。近年、Ca拮抗薬に、下部食道括約筋へのCa2⁺流入を阻害することで噴門部の括約筋を弛緩させ、胃酸の逆流を起こし上部消化管疾患を誘発させる可能性が報告されている。Hamadaらは、胃酸分泌抑制薬の処方件数をアウトカムとしたCa拮抗薬の上部消化管疾患に対する影響を疫学的に検討した結果、高齢者及び非高齢者のCa拮抗薬服用群の胃酸分泌抑制薬の処方件数が、ARB、ACEI服用群と比較して、有意に高いことを報告した。しかしながら、上述の調査は、胃腸障害の診断を実際に確認することが困難な研究であった。そこで、本研究では、Ca拮抗薬と逆流性食道炎の関係を明確にするため、埼玉県内の病院の電子カルテを用いて、非高齢高血圧患者における各種Ca拮抗薬による逆流性食道炎の発症率、服用期間と逆流性食道炎の発症率の関係等を直接調査することとした。
【方法】埼玉県内の病院を受診した交絡因子の少ない65歳未満の高血圧患者で2010年1月から2015年3月までの5年2ヶ月の間に高血圧治療薬(アムロジピン(AM)、ニフェジピン(NF)、ベニジピン(BN)、アゼルニジピン(AZ)、オルメサルタン、テルミサルタン)の処方を受け、かつ高血圧治療薬の処方が1年以上続いている患者1810人(男性:853人、女性:957人、平均年齢:50歳)を対象とした。そして、各種Ca拮抗薬群とcontrol群(ARB服用群)に分け、上記の項目を比較した。尚、逆流性食道炎の発症の確認は、内視鏡検査を実施し、逆流性食道炎と診断された患者とした。
【結果】control群(ARB)の逆流性食道炎の発症率が、7.5%(59/781名)であったのに対し、AMは18.8%(111/595名)、NFは21.5%(67/316名)、AZは11.8%(7/59名)、BNは8.4%(5/59名)と、AMとNF服用群において発症率が有意に高かった。また用量別の発症率はAM、NFは各用量において発症率が有意に高かった。一方、AZ、NFは用量依存的に発症率が上昇した。服用期間別の発症率はcontrolの1.2%/年に対し、AZとNFはそれぞれ、3.6%/年、4.6%/年の上昇を示し、2年目以降有意に上昇した。
【考察】用量別発症率の結果からL型Ca2⁺チャネルのみを抑制するAMとNFは、L型以外も抑制するBN、AZと比較して発症率の特徴に違いがみられたことから、L型単独を抑制する薬物では発症のリスクを増大させる可能性が高いと考えられる。服用期間別の発症率の結果から、力価の高いAMとNFにおいて2年目以降から有意に発祥率が上昇したことから、Ca拮抗薬による逆流性食道炎の発症リスクには力価が関与していると考えられえる。以上のことから、先行研究で可能性が示唆されたCa拮抗薬服用により逆流性食道炎のリスクが増大することが明らかとなった。 -
薬局におけるメトトレキサートを例にした重篤な副作用の情報提供に対する患者の意識に関する調査研究
遠藤 栞、茂木 肇、木村 光利、田中 真奈美、小松 由美子、大山 邦之、荻原 政彦
第59回薬学会関東支部大会 日本薬学会関東支部
Event date: 2015.09
Language:Japanese Presentation type:Poster presentation
Venue:日本大学薬学部
【目的】薬剤師は、薬剤司法第25条の2で定められているように患者に対し、薬に関する情報の提供および指導を行わなければならない。これは、患者がためらう重篤な副作用でも例外ではない。しかし、重篤な副作用の提供により、患者の服薬コンプライアンスが低下することも懸念される。本研究では、メトトレキサートによる間質性肺炎を例に取り、重篤な副作用の情報提供に対する患者の意識調査を行った。
【方法】2015年1月26日から4月27日の30日間、(株)ヘルスアップしもふり薬局に来局した患者150名を対象にメトトレキサートによる間質性肺炎について情報提供(発症頻度、後発時期、初期症状)後の意識に関してアンケート調査を行った。なお、実際にリウマチ疾患患者の影響を避けるため、整形外科領域受診の患者は対象外とした。
【結果・考察】対象者に「重篤な副作用を聞き、この薬に対してどう感じたか」と質問したところ「少しためらうが治療のために服用する」、「心配なのでできれば服用したくない」と回答した方が最も多かった。その理由として、副作用情報の中の発症頻度に関する情報が不安に感じたという意見が最も多かった。これにより、薬剤師は発症頻度に対する不安を解消する補足説明を行う必要があると考えられる。 -
業務形態別かかりつけ薬局の利用推進に関する調査研究
山本 夕貴、深澤 貴弥、臼井 滋、小松 由美子、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
埼玉医療懇話会第35回学術研究講演会 埼玉医療懇話会
Event date: 2015.07
Language:Japanese Presentation type:Oral presentation (general)
Venue:さいたま市文化センター
【背景・目的】薬局では患者毎に薬歴を作成し、薬剤師が薬歴を管理している。これにより、薬剤師は患者の薬剤間相互作用による副作用を防ぎ、重複投与や過量投与のリスクを回避できる。そのため、現在では「かかりつけ薬局」を持つことが推奨されている。しかし、既存の調査によるとかかりつけ薬局を「持っていない」と答えた人は74.8%を占め、その理由として「医療機関の近くを利用しているから」と回答した患者が63.5%を占めていた。したがって、かかりつけ薬局は社会に十分に浸透しているとは言い難い。そこで、本研究では、かかりつけ薬局に関して、業務形態の異なる門前薬局でかつ調剤薬局、面薬局でかつ調剤併設型ドラッグストア(以下、DSと略す)と門前薬局でかつDSに来局した患者を対象に、かかりつけ薬局を持つことに関するアンケートを取り、意識調査を実施し、かかりつけ薬局を持ってもらうためにどのような取り組みが必要であるかを考察した。
【方法】ウエルシア薬局越谷大袋店(面薬局・DS)、ウエルシア薬局野田七光台店(門前薬局・DS)、(株)ヘルスアップさくら薬局(門前薬局・調剤薬局)において、平成26年7月1日から9月6日までに各々に来局した患者のうち、アンケートの同意が得られた患者477名(ウエルシア薬局越谷大袋店158名、ウエルシア薬局野田七光台店158名、(株)ヘルスアップさくら薬局161名)を対象に、かかりつけ薬局を持ったきっかけ、選んだ理由、持つ利点の認知度などについて、アンケート調査を実施した。
【結果】かかりつけ薬局を持っている患者304名を対象に、持ったきっかけについて門前薬局と面薬局で比較すると、面薬局では「薬剤師からの薦め」が42名(34%)と、門前薬局に対し有意に多かった。一方、調剤薬局とDSでは、両者とも「なんとなく選んだ」が最も多く、33名(35%)と36名(42%)で有意な差が認められなかった。次に選んだ理由について、門前薬局では「病院に近いから」が最も多く28名(33%)であったが、面薬局は「相談しやすい」が最も多く24名(19%)であり、門前薬局に対し有意に多かった。一方、DSと調剤薬局では同様な傾向が見受けられたが、両者には有意な差が認められなかった。次に、かかりつけ薬局を持っていない患者173名を対象に、かかりつけ薬局を持つことへの3つの利点の認知度を調査したところ、全て知っていた患者が12名(6%)、いずれかを知っていた患者が73名(42%)、全く知らない患者が88名(52%)であった。そして、いずれかを知っていた患者の内訳は、「薬の管理ができる」が55名(75%)、「副作用を未然に防げる」が51名(70%)、「健康食品や薬の飲み合わせなどの相談ができる」が9名(12%)であった。
【考察】以上の事から、かかりつけ薬局を持つ患者数増加を推進するための取り組みとして、門前薬局では薬剤師による利点の呼びかけを積極的に行い、患者との信頼関係を築くために患者が相談しやすい環境を作るべきである。さらに、薬剤師は処方薬のみではなく、健康食品や市販薬などの幅広い知識を得て、患者に説明していく必要があると考えられた。 -
高血圧患者に対する薬剤師の家庭血圧測定指導効果に関する調査研究
加藤 美穂、茂木 肇、木村 光利、前田 勝代、荻原 政彦
埼玉医療懇話会第35回学術研究講演会 埼玉医療懇話会
Event date: 2015.07
Language:Japanese Presentation type:Oral presentation (general)
Venue:さいたま市文化センター
【背景・目的】高血圧は、最新の高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)によると、現在の患者数が約4,300万人と本邦において最も多い生活習慣病である。高血圧疾患において、適切な治療や血圧管理を行うことは、脳卒中などの病気を予防し、進行を抑制する上で重要である。そのため、家庭血圧を測定することによる自己管理が推奨されている。一方で、家庭血圧測定の意義を正しく理解していない患者が多く見られる。
本研究では、薬剤師が高血圧患者に家庭血圧測定方法の情報提供を行うことが、患者の家庭血圧の管理状況を改善するのか否かや、服薬アドヒアランス向上に効果的であるのかを明らかにし、薬剤師が家庭血圧測定方法指導を行った際の影響について検討した。
【方法】2014年9月~12月までの4か月間に株式会社前田薬局(埼玉)に来局し、降圧薬を服用して高血圧治療を行っている患者101人を対象に、家庭血圧測定の実態を対面式のアンケート調査を行い、その内追跡可能な49名に対して、正しい血圧測定方法指導前後の血圧変化を求め、薬局での指導による家庭血圧の信頼性の向上や指導前後の定期来局からみた服薬アドヒアランスの変化について検討した。
【結果】対象患者101名の内、追跡調査が可能だった49名に、指導前後の家庭血圧値の変動を比較した。その結果、血圧変動について、5mmHg未満であった患者が23名(47%)、5~10 mmHg未満であった患者が19名(39%)、10 mmHg以上であった患者は7名(14%)であった。さらに、対象患者49名に、正しい血圧測定方法を指導することによりアドヒアランスの割合を定期来局率から解析した。アドヒアランス不良患者は、指導前が49名中38名(78%)であったのに対し、指導後は49人中14人(29%)と有意に減少した。
【考察】指導前後の家庭血圧値の変動を比較すると、血圧変化が5mmHg未満と5~10 mmHg未満のある程度指導前から適切な血圧管理が行えていた患者には、薬剤師のリーフレットなどを用いた血圧管理指導が有効であることが示された。一方、10mmHg以上の血圧変化があった患者に対しては、薬剤師が血圧の指導をしただけでは、家庭血圧の管理状況が改善できるとは限らず、薬物治療に関する指導も併せて行うことが必要と思われる。また、薬剤師による血圧管理指導でアドヒアランス不良患者が有意に減少したことは、薬剤師が高血圧患者に対し、家庭血圧測定の意義を説明することで、患者の服薬忘れの減少に寄与したと考えられる。
以上のことから、高血圧患者の服薬アドヒアランスを向上させるためには、薬剤師が薬局の窓口で、リーフレットや口頭だけの血圧管理指導は一部の患者には有効であった -
地域薬局におけるセルフメディケーションに対する患者の意識に関する調査研究
小島 望、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
埼玉医療懇話会第35回学術研究講演会 埼玉医療懇話会
Event date: 2015.07
Language:Japanese Presentation type:Oral presentation (general)
Venue:さいたま市文化センター
【背景・目的】セルフメディケーションとは、世界保健機構(WHO)の定義によると「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」とされ、患者自身が一般用医薬品を使用することによって、自らの健康を守ることである。そして、患者がセルフメディケーションを行うことにより、医療費や介護費の高騰を抑制し、現在の医療制度を維持することが可能になると考えられる。しかし、現在の日本では、急速な高齢化と地方の過疎化に伴う骨粗鬆症などの慢性疾病患者数が増加し、セルフメディケーションの推進が十分に図られていない。
そこで、本研究では、地域薬局におけるセルフメディケーションの患者の意識に関して調査し、これらの結果を元に、セルフメディケーションの推進を向上させるために地域薬局の薬剤師が行うべき対策を考察した。
【方法】2014年12月~2015年2月の3ヶ月間に、長野県伊那市の門前薬局に来局した患者130名(平均年齢69歳)に、①年齢、性別②セルフメディケーションの認知度③軽微な不調がある場合の対処方法④処方薬と健康食品等との飲み合わせの有無及び理由⑤薬局薬剤師への相談の有無及び理由の5項目について口頭で聴き取り調査を実施した。
【結果】セルフメディケーションという言葉を知っているかという質問に対し、「知っている」と回答した患者は130人中4人(3%)であり、「知らない」と回答した患者は126人(97%)と有意に多かった。また、軽微な不調がある際はどのような対処方法をとるかという質問に対して「自分で薬をドラッグストアなどで買い使用する」と回答した患者が55人(42%)と最も多かった。次いで、「処方薬の他に健康食品やサプリメントなどを使用するか」という質問に対して、「飲んでいる」と回答した患者は77人(59%)であった。そこで、その患者77人に対して、処方薬と一般医薬品等との併用に関し、「薬剤師に相談する」と回答した患者は2人(3%)であり、一方、「薬剤師に相談しない」という患者が75人(97%)と大部分であった。
【考察】セルフメディケーションという名称の認知度は130人中4人と全体の3%と低く、一方、それらの患者の多くのは、セルフメディケーションの定義に相当する行為を行っていることが判明した。これらのことは、本調査薬局が高齢者の割合が多い地域薬局であることが主な要因であると考えられた。更に、それらのほとんどは薬剤師に相談をしていない事も判明した。そのため、今後、地域薬局の薬剤師は処方薬だけではなく一般用医薬品等に対しても正しい知識を習得することと共に、患者の一般用医薬品等の使用動向を把握することがセルフメディケーションの推進に繋がるものと考えられる。 -
PTP包装による誤飲対策に関する薬学的調査
遠藤 沙紀、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
埼玉医療薬学懇話会 第34回学術研究講演会 埼玉医療薬学懇話会
Event date: 2014.07
Language:Japanese Presentation type:Poster presentation
Venue:城西大学薬学部
【背景・目的】Press through package(以下、PTP)とは押し出し式の薬剤包装であり、衛生的で利便性があるため、現在最も普及している。その一方で、薬をシートごと服用するなどの誤飲事故が続き、問題となっている。そこで本研究では、PTP誤飲に関する論文から対策案を調査し、薬剤師の視点からどのように予防に努められるかを考察した。
【方法】医学中央雑誌、国立国会図書館等から『PTP誤飲とその対策』に関する論文(1972年1月~2013年11月)を調査対象とした。その予防案を、①薬剤師が出来ること、②企業側の改善によるもの、③その他に分類した。
【結果】調査の結果、対策記載論文数は67件(延べ201件)得られた。その内、①薬剤師が出来ることは延べ90件(45%)あり、主な項目として、患者への指導(37件)、一包化(31件)などが挙がった。②企業側によるものは87件(43%)で、X線非透過性にする(24件)、辺縁を鈍角にする(23件)などが挙がった。③その他は24件(12%)で、PTPを処方しない(9件)、服薬時に周りの者が包装から出して渡す(9件)などが重要とされた。
【考察】以上の結果から、薬剤師が出来ることの方が、企業側の改善によるものを、件数的には同等であったが、個々の詳細な意見や考察から重要視されていることがわかった。企業側への要望は実現まで時間を要するため、薬剤師がPTP誤飲に関する啓発活動をし、薬だけでなくその包装容器の事故に関して指導を丁寧にすることが重要と考えられた。 -
山梨大学医学部附属病院の薬務室における安全・安心な医療の提供に関する薬剤師の役割と連携について
二階堂 綾美、茂木 肇、木村 光利、長澤 みわ子、寺島 朝子、荻原 政彦
埼玉医療懇話会第34回学術研究講習会 埼玉医療懇話会
Event date: 2014.07
Language:Japanese Presentation type:Poster presentation
Venue:城西大学薬学部
【背景・目的】平成18年版厚生労働白書より、我が国の医療提供体制は、国民皆保険制度とフリーアクセスの下で、国民の健康を確保する整備が進められる中、医療を取り巻く環境の変化への対応として、より質の高い効率的な医療サービスを提供することが課題となっている。そこで、臨床現場では、どのような対応が行われているか、実習先の一つである山梨大学医学部附属病院(以下、当院)を例に、現状の把握を目的とした。
【方法】平成25年6月3日~7月26日に、当院薬務室において、薬剤師が院内各部署や他職種とどのような連携を図っているか、現状を把握し取りまとめた。
【結果・考察】当院薬務室では、薬剤部門システムによるデータ管理及び担当薬剤師による目視での発注管理を合わせて行うことにより、適正在庫を維持していた。この定期発注にさらに臨時発注を組合わせることにより、消費予測が困難な医薬品について、欠品を起こさず臨床現場の要求に速やかに応じることを可能にしている。また不良在庫を発生させず、卸業者に対して緊急配達などの負担を軽減できると考えられる。
即ち、薬剤部門システムのデータ管理と担当薬剤師の目視での定期及び臨時発注を組合わせることは、不良在庫の発生を抑え、病院の健全な経営に貢献し、患者に安心かつ安全で継続的な医療体制の提供を維持できるものと考えられる。 -
日本の精神疾患患者における禁煙治療の現状と諸外国の場合との比較について
関口 菜都子、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
埼玉医療懇話会 第34回学術研究講演会 埼玉医療懇話会
Event date: 2014.07
Language:Japanese Presentation type:Poster presentation
Venue:城西大学薬学部
【背景・目的】精神疾患患者の喫煙率は、一般成人と比較すると高値である。その要因として、精神疾患患者は禁煙に対する動機が明確でないことや、動機を治療終了時まで保つことが出来ないケースが多く治療を中断してしまうため、再喫煙率が高いことなどが挙げられる。そこで、日本と諸外国の精神疾患患者の禁煙成功率や治療方法を文献的に調査し、これからの日本の禁煙指導に薬学的に必要なものは何かについて考察した。
【方法】日本と諸外国の精神疾患患者における禁煙成功率および治療方法について比較するため、医学中央雑誌やThe Journal of the American Medical Associationなどから文献検索を行い、詳細を解析した。
【結果】日本における精神疾患患者の禁煙成功率は23.9±6.8%であったのに対し、諸外国は44.8±3.4%と、諸外国の方が禁煙成功率が高かった。次に、それらの治療方法を分類したところ、日本は薬物治療のみだったのに対し、諸外国は薬物治療の他にグループ認知行動療法(CBT)、動機づけ強化療法(MET)などのカウンセリングを組み合わせた治療を行っていた。
【考察】諸外国の禁煙成功率が日本よりも高い理由として、CBTやMETなどのカウンセリングを併用している為と考えられる。CBTやMETなどのカウンセリングは薬剤師も服薬指導時などに実践することが可能であるため、薬剤師という立場からも、悩んでいる人に気付き、話を聞いて必要な支援につなげ、ゲートキーパーとして積極的に禁煙治療に関与していくことが望まれる。 -
かかりつけ薬局と服薬アドヒアランスの関係性について
岩野 貢典、石渡 知子、茂木 肇、木村 光利1、荻原 政彦
埼玉医療懇話会第34学術研究講演会 埼玉医療懇話会
Event date: 2014.07
Language:Japanese Presentation type:Poster presentation
Venue:城西大学薬学部
【背景・目的】かかりつけ薬局を持つ患者は、自身の治療に対して積極的であり、薬の専門用語に関する知識を持つことで、高い服薬アドヒアランスがあると言われている。しかし、この詳細な調査は行われていない。そこで、かかりつけ薬局を持つ患者が、専門用語としての日本薬剤師会が伝わりにくいとされている「後発品」に関する知識を持ち、高い服薬アドヒアランスがあるのか否かを、かかりつけ薬局を持たない患者と比較検討し、今後の薬剤師としてどのような取り組みが必要なのかを考察した。
【方法】調査期間は、平成26年2月10日~平成26年3月14日の33日間とし、開成堂石渡薬局の来局者を対象に、かかりつけ薬局の有無を分類し、①後発品に関する理解度②薬剤師の説明を理解しているかに関してアンケートを行った。
【結果および考察】①の項目から、かかりつけ薬局あり群となし群では、後発品についての理解度に違いは認められなかった。その一方、②の項目から、かかりつけ薬局あり群は、「薬剤師の説明を理解している」患者が多かった。これは、薬剤師と患者の関係が良好であり、患者が薬剤師の説明を聞いているためと考えられる。以上のことから、かかりつけ薬局を持っている患者では、薬剤師の説明を理解しており、薬剤師を身近な存在として感じていることが明らかになった。したがって、かかりつけ薬局の利用を啓発することで、アドヒアランスの向上に繋がると考えられる。 -
薬局来局者におけるOTC医薬品ネット販売に関する意識調査
小田 翔平、長島 こぎく、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
埼玉医療懇話会第34回学術研究講演会 埼玉医療懇話会
Event date: 2014.07
Language:Japanese Presentation type:Poster presentation
【背景・目的】2013年の薬事法の改正により、正式にOTC医薬品がインターネットで販売できるようになったが、患者がOTC医薬品を適切に選択し、それら医薬品を安全に使用できるか否か問題視されている。そこで今回、OTC医薬品インターネット販売(以下、ネット販売と略す)に関する患者の意識を調査し、今後薬剤師がOTC医薬品ネット販売についてどのように向き合っていくべきか考察した。
【方法】2014年1月7日~2014年6月2日に勝瀬薬局に来局した患者71名を対象にOTC医薬品ネット販売について、アンケート形式で調査を行った。
【結果・考察】当局に来局した大多数の患者において、OTC医薬品のインターネット販売に対する認知度は高かったが、その患者のほとんどは、「自分で正しい薬を選択できない」、「副作用が起こるか心配」という理由から、OTC医薬品ネット販売を利用したくないと考えていることが明らかとなった。これは、患者がOTC医薬品ネット販売に関して、メディアなどを通じて認知しているが、患者は薬剤師を介さずに薬を購入することについて不安に感じていることが示された。また、OTC医薬品ネット販売に求める事として、販売薬に対する「信頼性」や「アフターフォロー」、「薬の情報提供」などの今まで薬剤師が対面で実践していた内容であった。これらの結果から、薬剤師はOTC医薬品ネット販売に関して、薬剤師が従来行っていたように積極的に介入することが求められていると考えられる。 -
Ca拮抗薬とグレープフルーツジュースの飲み合わせを例にした患者の薬に対する知識の定着を目指した取り組みについて
中村 梨絵、茂木 肇、木村 光利、白石 卓也、荻原 政彦
埼玉医療懇話会第34回学術研究講演会 埼玉医療懇話会
Event date: 2014.07
Language:Japanese Presentation type:Poster presentation
Venue:城西大学薬学部
【背景・目的】病院や調剤薬局で勤務する医療従事者が、患者へ薬や薬物治療、病気等の情報提供を行う際、その内容に関して人為差を解消すべく、紙媒体が多く使用されている。一方、日本製薬工業協会の調査によると、患者は「薬の飲み合わせ」に関する服薬情報を多く望んでいたことが分かった。そこで本研究では、Ca拮抗薬とグレープフルーツジュースを例にとり、パンフレットを作成し、配布することにより、患者が薬の飲み合わせに対し、知識が定着するか否かについて検討した。
【方法】平成25年11月18日~12月28日に薬局アポック三芳店で、Ca拮抗薬(アムロジピンとニフェジピン)が処方された患者51名に、パンフレット配布前後で、Ca拮抗薬とグレープフルーツジュースの飲み合わせに関するアンケートを実施し、パンフレット配布による効果を比較した。
【結果】本研究で作成したパンフレット内容に関する全ての設問項目において、パンフレット配布後では、配布前と比較して有意な知識の定着が認められた。しかし、服用間隔において4割近くの患者が未だ「2時間」と誤った回答を行った。
【考察】本研究において、医療用語を使用せず端的に作成したパンフレットを用いて情報提供をすることが有効的であった。しかし、服用間隔においては誤った回答の是正が少なかったことから、パンフレット内容の改良や何度も服薬指導時に情報提供していく必要があると考えられた。 -
後発医薬品に対する医師・薬剤師の意識について
渡部 秀樹、渡部 秀人、太田 昌一郎、斎藤 耕一、時任 敏基、杉本 あけみ、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
埼玉医療懇話会第34回学術研究講演会 埼玉医療懇話会
Event date: 2014.07
Language:Japanese Presentation type:Poster presentation
Venue:城西大学薬学部
【背景・目的】政府は薬剤費の抑制を目的に、後発医薬品(以下、後発品と略す)の使用を推奨している。しかし、我が国の後発品のシェア率は欧米諸国と比較すると低水準である。そこで、医師及び薬剤師を対象に後発品に関する意識調査を行い、その結果から薬剤師として後発品普及に必要な対策について考察した。
【方法】調査期間は、平成25年7月~平成25年11月とし、所沢メディカルクリニック、ときとうクリニック、薬樹グループ薬局、坂戸中央病院に勤務する医師21名、薬剤師52名にアンケートを行った。主な項目は①後発品の普及を支持しているのか、②医師と薬剤師は後発品の普及に対してどのような連携をとっているのかとした。
【結果および考察】①の項目から、後発品の普及に対し、医師は消極的で、薬剤師は積極的な方が多く、その理由とし、医師は薬局でどの後発品が使用されるかわからないというデメリットが大きく、薬剤師は後発医薬品調剤体制加算が得られるというメリットが大きいためと考えられる。②の項目では、医師は薬剤師から後発品に関する情報提供を期待しているが、薬剤師はその情報提供を重要だと考えていないという傾向が見受けられた。以上のことから、今後は薬剤師が率先して後発品の情報を医師に提供する場としての報告会を開催し、医師の不安を軽減すことが大切だと考えられる。これにより、後発品のシェア率を上げ、薬剤費の縮減に繋がることを期待したい。 -
患者の内服薬の飲み忘れにおける残薬の管理と服薬に関する調査研究
鈴木 舞、茂木 肇、木村 光利、飯島 朋子、荻原 政彦
埼玉医療懇話会第34回学術研究講演会 埼玉医療懇話会
Event date: 2014.07
Language:Japanese Presentation type:Poster presentation
Venue:城西大学薬学部
【背景・目的】現在、厚生労働省の調査によると、薬の飲み忘れ等で発生している残薬は、年間約500億円にも及ぶといわれており、その対策が求められている。しかし、実際、患者やその介護者がどのような残薬管理をしているのかは明確になっていない。そこで、残薬管理に関するアンケートを行い、その結果から残薬発生防止の取り組みについて考察した。
【方法】本研究は、2013年7月~9月の2か月間に、しんわ薬局狛江通り店に来局した患者を対象に残薬管理に関するアンケート調査を行った。調査結果の解析では、対象者を薬を自身で管理している自己管理者と他者が管理する他者管理者の2群に分類し、それぞれ比較した。
【結果・考察】自己管理および他者管理の両群とも、薬を「薬袋」で管理している患者が多く、ピルケースやお薬カレンダーを使用している患者は少ない傾向であった。更に、「薬袋」で薬を管理している患者は、残薬をそのまま保管もしくは廃棄している割合が多く、残薬を薬局で調整している患者は少なかった。このような結果から、残薬発生を抑制するためには、残薬を保管、廃棄している患者層が、意識的に薬局で残薬を管理・調節してもらうことが重要であり、その対策として、飲み忘れた薬をバックなどに入れ、それを薬局へ持参し、薬を処方調節する「節薬」バック運動の導入が推奨できると考えられる。 -
調剤薬局における電話問い合わせの減少を目指した取り組みについて
佐藤 紘大、石山 光、原 邦之、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
第57回日本薬学会関東支部大会 日本薬学会関東支部
Event date: 2013.10
Language:Japanese Presentation type:Poster presentation
Venue:帝京大学板橋キャンパス
【目的】調剤薬局における電話問い合わせへの対応は、薬剤師の重要な業務の一つである。しかし、電話による回答には、時折、予期せぬ時間を費やすことがあり、調剤業務が遅れ、患者の待ち時間の増加にも繋がる。そこで、本研究では、ポスターによる注意喚起の前に電話問い合わせの多かった「飲み合わせ」に関するポスターを掲示し、注意喚起を促すことで、電話問い合わせの件数と内容がどのような変化をするのか調査した。
【方法】調査期間は、ユニコ調剤薬局本店(埼玉県坂戸市)の来局者を対象に、平成25年5月7日~平成25年7月14日までの10週間で、「薬の飲み合わせ」に関するポスターを作成し、投薬窓口に掲示し、電話問い合わせ件数およびその内容を調査した。
【結果】ポスターの掲示前後では、電話問い合わせの内訳において、「飲み合わせ」の項目の割合が33.3%から20.9%と有意な減少が認められた(P<0.05)。これに対して、「用法・用量」の割合は、20%から25.6%へと増加傾向が見受けられた。
【考察】「飲み合わせ」に関するポスターの掲示により、患者の「飲み合わせ」に対する疑問点を、投薬時に解消することができ、その結果、総電話問い合わせ件数の減少に繋がったものと考えられた。しかし、この疑問点の解消により、「用法・用量」など新たな疑問点が患者に生じ、他の項目の割合が若干増加した。今後は、今回調査した電話問い合わせ内容を基に、患者に必要な情報を提供し、ポスターなどを用いて注意喚起していくことが、全体的な電話問い合わせ件数を削減させるのに有用だと考えられた。 -
高血圧治療薬における後発医薬品の経済評価について
中村 仁、添田 修司、金井 理、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
第57回日本薬学会関東支部大会 日本薬学会関東支部
Event date: 2013.10
Language:Japanese Presentation type:Poster presentation
Venue:帝京大学板橋キャンパス
【目的】現在、日本における傷病別一般診療費構成割合の中で、循環器系疾患は、21.2 %と1位であり、65歳以上に至っては約28.7 %を占めている。循環器系疾患は、院外処方せんの発行率が高く、様々な後発品が普及しているため、この薬剤料の抑制が国民医療費適正化の観点から重要になる。蕨中央薬局(以下、当局)においても、循環器系疾患の患者が後発品に変更する傾向が、今後高くなると予想される。後発医薬品の普及が進めば、医療費の削減につなげることが可能となるが、現在、その普及率は、数量シェアで22.8%と停滞している。そこで、本研究では、循環器系疾患のうち、高血圧治療薬の先発品と後発品の使用状況調査を行い、患者の負担額を検証すると共に、患者が後発品を使用してもらうためには、薬局としてどのような取り組みが必要か考察した。
【方法】平成24年4月1日~平成24年9月30日までの期間、蕨中央薬局においてアムロジピンが処方された患者(総数:425名)を対象に薬歴から、患者負担額を調査し、その差を比較検証した。
【結果および考察】1ヶ月を28日とし1ヶ月毎に処方せんを当局に持参したと仮定して12ヶ月間服用を続けた際の費用を検証した結果、先発品から後発品に切り替えた場合の患者負担額は、1ヶ月あたり1割で70円、3割で210円軽減した。12ヶ月では1割で840円、3割で2,520円軽減した。1回の処方せん受付の軽減額が少ないため、後発品に変更しても患者自身が経済的に得を感じないことが普及遅れの原因であると考えられる。従って、保険診療の仕組みと長期的な負担軽減額を視覚的に患者へ説明し、後発品への変更を働きかけていくことが求められる。 -
残薬発生の原因調査
秦 智子、北畑 智英、曽我部 直美、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
埼玉医療薬学懇話会 第33回学術研究講演会 埼玉県医療薬学懇話会
Event date: 2013.06
Language:Japanese Presentation type:Oral presentation (general)
Venue:大宮法科大学院大学
【背景・目的】残薬とは、病院などの医療施設から処方された薬の飲み残しのことである。平成24年度、診療報酬改定において、「残薬確認」が、薬剤服用歴管理指導料の項目に追加された。この「残薬の確認」制度は、年間約500億円といわれる飲み忘れ等による薬剤の無駄をなくし、医療費削減に繋げることを目的に導入された。それに伴い、患者の服薬アドヒアランスを高めてQOLの向上に繋がるものとして、導入前から注目を集めていた。そこで、本研究では、残薬の状況や残薬を無くすための工夫ならびに、残薬発生の原因といった項目に関するアンケートを患者に実施し、その結果から残薬を減らすための対策を考察した。
【方法】埼玉県済生会栗橋病院(以下、当院)における平成24年12月と平成25年4月に服用中薬剤を持参して、循環器科に入院してきた患者19名を対象に、入院の際に持参した薬の入院前の服用状況についてアンケートを実施した。
【結果】対象患者19名中、残薬があったのは7名であった。その7名の内、飲み忘れが5名、服用方法の理解不足が2名であった。更に残薬がないと答えた12名を対象に、飲み忘れ防止のために工夫している点の調査を行ったところ、次回飲む分の薬を用意しておくと答えた患者が4名、一包化と答えた患者が2名、服用する時間を1回にまとめてもらったと答えた患者が1名、特になしと答えた患者が5名であった。患者の持参薬の平均数は、残薬のあった患者(7名)では約8.3種類、残薬のなかった患者(12名)では約6.2種類であった。残薬発生の頻度は、7名中1週間に1回未満の患者が4名、ほぼ毎日が1名、不明が2名であった。残薬があった患者の年代別では、70代が6名と一番多く、次いで60代が1名であった。薬の知識について、『薬の服用を自己判断で中止したり、用法・用量を変更して薬を服用すると薬の効果が減弱したり、副作用が起こる可能性が高くなることを知っていますか』という質問に対して19名中3名が知らないと答えた。しかし、この3名とも残薬はなかった。【考察】上記の聞き取り調査の結果から、自宅における残薬発生の原因として最も多いものは、飲み忘れであると考えられる。また、今回は、アンケートに受け答えのできる患者のみを対象にアンケートを実施したため、薬の飲み方について理解が不足している患者はもっと多い可能性が考えられる。一方、薬を飲んだ時に次回飲む分の薬を用意しておくといった工夫により、残薬を減らすことが出来ると考えられる。更に、80代(2名)で残薬があった患者が0名であった理由として、家族による薬の管理があったためと考えられる。薬の飲み方について理解が不足している患者には、家族による薬の管理が大切と考えられる。また、ほぼ毎日忘れる患者では、薬識が薄く、薬剤師の指導によるアドヒアランスの向上が大切と考えられた。更に、最も残薬の多い用法は、毎食後であったため、出来るだけ作用時間の長い薬に切り替えて、服用回数を少なくするなどで、残薬を減らすことが出来ると考えられた。 -
前立腺がん患者におけるタキソテール療法について
浅田 憲宏、茂木 肇、木村 光利、斎藤 恭正、齊藤 昌久、荻原 政彦
埼玉医療薬学懇話会 第33回学術研究講演会 埼玉医療薬学懇話会
Event date: 2013.06
Language:Japanese Presentation type:Oral presentation (general)
Venue:大宮法科大学院大学
【背景・目的】
前立腺癌は、天寿癌とも言われ、発見されずに一生を終える場合もあるが、近年、Prostate Specific Antigen(PSA)検査の普及により、罹患率は増加傾向にある。日本では、2006年の罹患率が、胃癌、大腸癌、肺癌に次いで第4位であるが、2020年の罹患数は肺癌に次いで2番目になることが予想されている。そのため、今後、前立腺癌に対する標準的治療やドセタキセル投与による副作用等の予防が重要と考えられる。そこで、今回、ドセタキセル療法患者の治療経過を追跡するとともに、前立腺癌の治療について検討した。
【症例】
80代、男性、前立腺癌、組織分類 Gleasonスコア(5+5=10)、StageⅣ、ホルモン療法を3年半行っていたが、PSA値の上昇と骨転移の悪化により、ドセタキセル(95mg)による治療を開始することとなった。ドセタキセル初回治療において、投与開始から退院までの治療経過を追跡するとともに、経過中に生じた好中球減少、その際に投与した顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)に焦点を当て、症例・治療効果について検討を行った。
【結果】
該当患者に対して、発熱性好中球減少症の予防の視点から、白血球数(WBC)、好中球数と体温をモニタリングしたところ、入院前血液検査結果では、特に目立った数値の異常はなかった。しかし、ドセタキセル(95mg)の初回投与にともない、day4の血液検査では、WBCが減少傾向にあり、day7には、WBC、好中球数ともにgrade2まで低下した。day11にWBCはGrade2の減少であったが、好中球数はGrade4まで減少が認められ、2日間グランシリンジ®(G-CSF製剤)75 μg1日1筒投与した。その後、day13にWBC 104.5×100/mm3、好中球数3866/mm3まで回復した。入院中の目立った発熱はなく経過し、発熱性好中球減少症の発症を回避することができ、退院となった。
【考察】
本症例では、ドセタキセル投与による発熱は生じなかった。好中球数500/mm3未満になった際に、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を、ドセタキセルの副作用回避の目的で併用したため、適正使用であったと考えられた。一方、発熱はなかったものの、好中球数500/mm3未満、Grade4の好中球減少が観察されたので、次回、ドセタキセル療法を行う際には、ドセタキセルの投与量の減量や好中球数の変動に十分注意し、1000/mm3未満になった時点で、G-CSFの投与を検討する必要があると考えられた。しかし、ドセタキセルの投与量を減量することで、治療効果が認められず、副作用のみが生じてしまう可能性も考えられるので、その際には、他の抗癌剤への変更も検討する必要があると考えられた。今回の症例のように、患者のWBC、好中球、及び体温を連日モニタリングすることで、発熱性好中球減少症を回避することができ有益であった。