講演・口頭発表等 - 茂木 肇
-
70%部分肝切除ラットにおけるプロスタグランジンE2の肝再生促進作用に関する組織化学的研究
内藤 浩太、北澤 知英、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
第58回日本薬学会関東支部大会 日本薬学会関東支部
開催年月日: 2014年10月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:昭和薬科大学
【目的】当研究室では、肝再生現象のin vitroモデル系としての初代培養肝実質細胞を用いて、肝再生を促進する薬物の探索を行ってきた。その一連の研究の中で、プロスタグランジンE₂(PGE₂)について検討したところ、我々は、PGE₂が単独で肝実質細胞の増殖を促進させることを見出した。そこで、本研究では、in vivo実験系である70%部分肝切除ラットにおいて、PGE₂による肝再生促進作用を検討するため、DNA合成期(S期)の核に特異的に取り込まれた5-bromo-2'-deoxyuridine(BrdU)を免疫組織化学的手法により測定することにより、DNA合成能に対するPGE₂の効果を評価した。
【方法】ラット(Wistar系、雄性)にエーテル麻酔下で70%部分肝切除術を施行し、術直後より、PGE₂を1日1回腹腔内投与した。術後、一定期間経過したモデル動物にBrdU(50
mg/kg,i.p.)を投与し、肝重量を測定した。その後、摘出した残余肝臓は、ホルマリン固定、パラフィン包埋した後、ミクロトームにより薄切して組織切片を作成した。S期の核に取り込まれたBrdUは、BrdU Inmunohistochemistry Kit(Exalpha Blologlcals)により染色し、その染色された割合(Labeling Index;LI)を計測した。
【結果及び考察】70%部分肝切除ラットに対して、PGE₂(10 μg/kg,i.p.)投与群では術後3日目においてcontrol(0.2%エタノール)群と比較すると有意な肝重量の増加が認められた。一方、DNA合成能の変動は、術後1日目において一過性のピークが認められ、術後1日目のLIは、control群が9.8%であったのに対し、PGE₂(10 μg/kg,i.p.)投与群は22.5%とDNA合成能の有意な上昇を示した。以上の結果より、PGE₂は、70%部分肝切除ラットにおいて、術後早期から肝実質細胞のDNA合成能を有意に上昇させ、肝再生を促進することが示された。 -
ビタミンCによる成熟ラット初代培養肝実質細胞の増殖促進作用はIGF-I受容体を介している
茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
日本薬学会 第134年会 日本薬学会
開催年月日: 2014年03月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:ホテル日航熊本、熊本大学黒髪キャンパス、熊本市総合体育館
【目的】当研究室では、肝再生現象のin vitroモデル系としてラット初代培養肝実質細胞実験系を独自に開発し、いくつかの増殖因子について、肝実質細胞に対する増殖促進作用機構を詳しく研究してきた。一連の研究の中で、我々は、様々な培地に含まれるビタミンC(L-アスコルビン酸:AsA)が、肝実質細胞の増殖に対して促進作用を示すことを見出した。しかし、AsAによる肝実質細胞増殖促進作用の機構に、どのような受容体が関与しているのかは、不明である。そこで本研究では、種々の増殖因子受容体に対する中和抗体を用いて、AsAおよびその誘導体による成熟ラット初代培養肝実質細胞の増殖促進作用機構を検討した。
【方法】in situコラゲナーゼ還流法により、成熟ラットから肝実質細胞を単離し、初代培養を行った。細胞接着後、無血清培地に交換し、AsA及びその誘導体、または増殖因子の受容体に対する中和抗体を添加した。一定時間培養後、肝実質細胞の核数の変化を計測した。
【結果及び考察】AsA及びその安定型誘導体であるL-アスコルビン酸-2-グルコシド(AsA2G)は、肝実質細胞に対して用量依存的に、有意な増殖促進作用を示した。一方、酸化型AsAであるデヒドロアスコルビン酸やAsAの光学異性体であるイソアスコルビン酸では、有意な細胞増殖促進作用は認められなかった。AsAおよびAsA2Gによる肝実質細胞増殖促進作用は、IGF-Ⅰ受容体に対する中和抗体を併用すると、完全に抑制された。一方、HGF受容体、EGF受容体、インスリン受容体、IGF-Ⅱ受容体に対する中和抗体は、AsAおよびAsA2Gによる肝実質細胞増殖促進作用に影響を及ぼさなかった。これらことから、AsAおよびAsA2Gによる肝実質細胞増殖促進作用には少なくともIGF-Ⅰ受容体が深く関与していることが示唆された。 -
70%部分肝切除マウスにおけるS-Allyl-L-Cysteineの肝再生促進作用の検討
鎌苅 紗綾、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
第57回日本薬学会関東支部大会 日本薬学会関東支部
開催年月日: 2013年10月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:帝京大学板橋キャンパス
【目的】当研究室では、従来から肝再生現象のin vivoモデル系として、70%部分肝切除ラットを用いて、肝再生を促す薬物の探索などを行ってきた。一連の研究の中で、水溶性含硫アミノ酸であるS-Allyl-L-Cysteine(ACys)に注目した。近年、ACysが神経細胞や表皮細胞などの増殖に関与していることが報告されている。そこで、本研究では、in vivo実験系の70%部分肝切除マウスを用いてACysによる肝再生促進作用を検討した。
【方法】マウス(ddY系、雄性)に70%部分肝切除術を施行し、術直後より、ACysを1日1回腹腔内投与して、術後1-5日目における肝臓の再生割合をcontrol(生理食塩水)群と比較した。また、マウスの門脈より採血し、血清トランスアミナーゼ(AST、ALT)活性値も測定した。【結果及び考察】70%部分肝切除後の肝重量の経時的変化において、control群は術後1日目から肝重量が増加し始め、術後5日目には切除前の元の肝重量にまで回復した。ACys群では、control群よりも早期に肝重量の増加が見受けられ、術後4日目におけるマウス体重10gあたりの肝重量は、control群0.36 gであるのに対し、ACys群は0.43 gと、ACys投与により、術後4日目で切除前の元の肝重量まで回復した。一方、ACys投与における70%部分肝切除マウスの血清AST及びALT活性は、共にcontrol群と大きな差は認められなかった。これらの結果により、ACysは、70%部分肝切除マウスの肝重量を、術後早期から有意に増加させたことから、肝再生を促進させることが示された。 -
アスコルビン酸2グルコシドのラット初代培養肝実質細胞増殖促進作用に対するアドレナリン作動性調節機構の検討
浅見 和希、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
第57回日本薬学会関東支部大会 日本薬学会関東支部
開催年月日: 2013年10月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:帝京大学板橋キャンパス
【目的】当研究室では、アドレナリン受容体作動薬と増殖因子(肝細胞増殖因子など)との受容体を介するシグナル伝達系との関連(cross-talk)について、成熟ラット初代培養肝実質細胞系を用いて検討してきた。その結果、α1およびβ2作動薬は、単独では、肝実質細胞の増殖に影響を与えないが、増殖因子との共存下で、増殖因子の増殖促進作用を増強させることを見出した。一方、我々は、L-アスコルビン酸2グルコシド(AsA2G)が、IGF-I受容体を介して、肝実質細胞の増殖を促進させることも見出した。そこで、今回アドレナリン受容体作動薬が、AsA2Gによる肝実質細胞増殖促進作用にどのような影響を及ぼすのかを検討した。
【方法】in situコラゲナーゼ還流法により、成熟ラットから肝実質細胞を単離し、初代培養を行った。細胞接着後、無血清培地に交換し、種々の濃度のAsA2G及び特異的シグナル伝達因子阻害薬を添加した。培養終了後、肝実質細胞のDNA合成能及び核数を計測した。
【結果および考察】初代培養肝実質細胞をAsA2G単独で刺激すると、培養時間に依存して肝実質細胞のDNA合成能および核数の増加が認められた。更に、このAsA2Gにより誘発された肝実質細胞のDNA合成能および核数の増加は、α1またはβ2作動薬の共存下で増強された。一方、α1およびβ2作動薬は、単独では肝実質細胞のDNA合成能および核数に影響を及ぼさなかった。これらの結果から、AsA2Gによる肝実質細胞増殖促進作用は、α1およびβ2作動薬により増強されることが示された。 -
ラット初代培養肝実質細胞におけるアスコルビン酸2グルコシドのMAPキナーゼ活性に対するアドレナリン作動性調節機構の検討
大沼 弘和、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
第57回日本薬学会関東支部大会 日本薬学会関東支部
開催年月日: 2013年10月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:帝京大学板橋キャンパス
【目的】当研究室では、アドレナリン受容体作動薬と増殖因子(肝細胞増殖因子など)の受容体を介するシグナル伝達系との関連(cross-talk)について、成熟ラット初代培養肝実質細胞系を用いて検討してきた。その結果、α1及びβ2 作動薬は、単独では、肝実質細胞の増殖に影響を与えないが、増殖因子との共存下で、増殖因子の増殖促進作用を増強させることを見出した。一方、我々は、L-アスコルビン酸2グルコシド(AsA2G)が、IGF-I受容体を介して、肝実質細胞の増殖を促進させることも見出した。そこで、α1及びβ受容体を介する肝実質細胞増殖修飾作用が、AsA2Gのシグナル伝達機構のどの部分と相互作用をしているのかを、IGF-I受容体チロシンキナーゼ(IGF-I-RTK)およびMAPキナーゼ(MAPK;ERK1/ERK2)の活性を直接測定することにより、検討した。
【方法】AsA2Gとα1及びβ2作動薬との共存下における初代培養肝実質細胞のIGF-I-RTK及びMAPK活性を、抗リン酸化IGF-I-RTK、ERK1/ERK2抗体を用いたWestern blot 解析法にて測定し、そのリン酸化活性を比較検討した。
【結果および考察】初代培養肝実質細胞をAsA2G単独で刺激すると、培養開始3~5分でピークとなる一過性のIGF-I-RTKおよびERK2リン酸化活性の上昇が発現した。更にERK2リン酸化活性はα1及びβ2作動薬の共存下で増強された。これらの結果から、肝実質細胞におけるAsAの肝実質細胞増殖促進シグナルは、IGF-I-RTKの下流からERK2の上流の間でα1及びβ2アドレナリン作動性増強を受けていることが示された。 -
70%部分肝切除マウスにおけるロイシンの肝再生促進作用の検討
阿部 拓也、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
第57日本薬学会関東支部大会 日本薬学会関東支部
開催年月日: 2013年10月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:帝京大学板橋キャンパス
【目的】当研究室では、従来から肝再生現象のin vivoモデル系として、70%部分肝切除ラットを用いて、肝再生を促す薬物の探索などを行ってきた。一連の研究の中で、分岐鎖アミノ酸の一つであるロイシン(Leu)に注目した。我々は、Leuによる肝実質細胞の増殖促進作用を、初代培養肝実質細胞を用いたin vitro実験系で証明した。そこで、本研究では、in vivo実験系の70%部分肝切除マウスを用いて、Leuによる肝再生促進作用の有無を検討した。
【方法】マウス(ddY系、雄性)に70%部分肝切除術を施行し、術直後より、Leuを1日1回腹腔内投与して、術後1-5日目における肝臓の再生割合をcontrol(生理食塩水投与)群と比較した。また、マウスの門脈より採血し、血清トランスアミナーゼ(AST、ALT)活性値も測定した。
【結果および考察】70%部分肝切除後の肝重量の経時的変化において、control群は術後1日目から肝重量が増加し始め、術後5日目には切除前の元の肝重量にまで回復した。これに対し、Leu投与群では、control群よりも早期に肝重量の増加が見受けられ、術後4日目におけるマウス体重10gあたりの肝重量は、control群0.38 gであるのに対し、Leu投与群は0.45 gと、Leu投与により、術後4日目で切除前の元の肝重量まで回復した。一方、Leu投与における70%部分肝切除マウスの血清トランスアミナーゼ活性は、術後2日目においてAST、ALT共に有意な低下が認められた。これらの結果により、Leuは、70%部分肝切除マウスの肝重量を術後早期から有意に増加させ、合わせて肝機能も早期に改善させることが示された。 -
70%部分肝切除マウスにおけるアスコルビン酸2グルコシドの肝再生促進作用の検討
大橋 愛、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
第57回日本薬学会関東支部大会 日本薬学会関東支部
開催年月日: 2013年10月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:帝京大学板橋キャンパス
【目的】当研究室では、従来から肝再生現象のin vivoモデル系として、70%部分肝切除ラットを用いて、肝再生を促す薬物の探索などを行ってきた。一連の研究の中で、アスコルビン酸2グルコシド(AsA2G)に注目した。我々は、L-アスコルビン酸の安定型誘導体であるAsA2Gによる肝実質細胞の増殖促進作用を、初代培養肝実質細胞を用いたin vitro実験系で証明した。そこで、本研究では、in vivo実験系の70%部分肝切除マウスを用いてAsA2Gによる肝再生促進作用を検討した。【方法】マウス(ddY系、雄性)に70%部分肝切除術を施行し、術直後より、AsA2Gを1日1回腹腔内投与して、術後1-5日目における肝臓の再生割合をcontrol(生理食塩水)群と比較した。また、マウスの門脈より採血し、血清トランスアミナーゼ(AST、ALT)活性値も測定した。【結果及び考察】70%部分肝切除後の肝重量の経時的変化において、control群は術後1日目から肝重量が増加し、術後5日目には切除前の元の肝重量にまで回復した。AsA2G群では、control群よりも早期から肝重量の増加が見受けられ、術後4日目におけるマウス体重10gあたりの肝重量は、control群が0.39 gであるのに対し、AsA2G群は0.46 gと、AsA2G投与により、術後4日目で切除する前の元の肝重量まで回復した。一方、AsA2G投与における70%部分肝切除マウスの血清ASTおよびALT活性は、共にcontrol群と大きな差は認められなかった。これらの結果より、AsA2Gは、70%部分肝切除マウスの肝重量を術後早期から有意に増加させたことから、肝再生を促進させることが示された
-
70%部分肝切除ラットにおけるL-アスコルビン酸及びL-アスコルビン酸2グルコシドの肝再生促進機構に関する組織化学的検討
藤木 恵太、池端 泰奈、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
日本薬学会第133年会 日本薬学会
開催年月日: 2013年03月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:パシフィコ横浜
【目的】当研究室では従来から肝再生現象のin vivoモデル系として、70%部分肝切除ラットを用いて、肝再生を促す薬物の探索などを行ってきた。一連の研究の中で、L-アスコルビン酸(AsA)に注目した。我々は、AsA及びその安定型誘導体であるL-アスコルビン酸2グルコシド(AsA2G)による肝実質細胞の増殖促進作用を、初代培養肝実質細胞in vitro実験系で証明した。そこで、本研究では、70%部分肝切除ラットにおけるAsA及びAsA2Gによる肝再生促進作用を検討するため、DNA合成期(S期)の核に特異的に取り込まれるBrdUを免疫組織化学的手法により測定し、in vivo肝実質細胞のDNA合成能に対する効果を評価した。
【方法】ラット(Wistar系、雄性)にエーテル麻酔下で70%部分肝切除術を施行し、術直後より、AsA及びAsA2Gを1日1回腹腔内投与した。術後、一定期間経過したモデル動物にBrdU(100 mg/kg,i.p.)を投与し、その後、摘出した残余肝臓をホルマリン固定、パラフィン包埋し、ミクロトームにより薄切して組織切片を作成した。S期の核に取り込まれたBrdU は、BrdU Immunohistochemistry Kit(Exalpha Biologicals)により染色し、その染色された割合(Labeling index;LI)を計測した。
【結果及び考察】70%部分肝切除におけるDNA合成能の変動は、術後1日目において一過性のピークが認められた。術後1日目のLIは、control群(生理食塩液)が13.0%であるのに対し、AsA(100 mg/kg,i.p.)投与群は26.5%でありDNA合成能の有意な上昇を認めた。AsA2GはAsAよりも低用量(50 mg/kg,i.p.)で、DNA合成能の上昇が認められ、LIは28.5%であった。以上の結果より、AsA及びAsA2Gは、70%部分肝切除ラットにおいて、術後早期から肝実質細胞のDNA合成能を有意に上昇させ、肝再生を促進することが示された。 -
ラット初代培養肝実質細胞におけるL-アスコルビン酸によるMAPキナーゼ活性化に対するアドレナリン作動性調節機構の検討
茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
日本薬学会第133年会 日本薬学会
開催年月日: 2013年03月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:パシフィコ横浜
【目的】当研究室では、肝再生現象の仕組みを解明するための一端として、アドレナリン受容体作動薬と増殖因子(上皮増殖因子;EGFや肝細胞増殖因子;HGFなど)の受容体を介するシグナル伝達系との関連(cross-talk)について、成熟ラット初代培養肝実質細胞系を用いて検討してきた。その結果、α1及びβ2 作動薬は、単独では、肝実質細胞の増殖に影響を与えないが、上記の増殖因子との共存下で、増殖因子の増殖促進作用を増強させることを見出した。一方、我々はL-アスコルビン酸(AsA)は、IGF-I受容体に結合し、肝実質細胞の増殖を促進させることを見出した。そこで、α1、α2及びβ受容体を介する肝実質細胞増殖促進作用の増強が、AsAのシグナル伝達機構のどの部分と相互作用をしているのかを、IGF-I受容体チロシンキナーゼ(IGF-I-RTK)及びMAPキナーゼ(MAPK;ERK1/ERK2)の活性を直接測定することにより、検討した。
【方法】AsAとα1及びβ2作動薬との共存下における初代培養肝実質細胞のIGF-I-RTKおよびMAPK活性を、抗リン酸化IGF-I-RTK、ERK1/ERK2抗体を用いたWestern blotting 解析法にて測定し、そのリン酸化活性を比較検討した。
【結果および考察】初代培養肝実質細胞をAsA単独で刺激すると、培養開始3~5分でピークとなる一過性のIGF-I-RTKおよびERK2リン酸化活性の上昇が発現した。更にERK2リン酸化活性はα1及びβ2作動薬の共存下で増強された。一方、α1及びβ2作動薬は、単独ではIGF-I-RTKおよびMAPKリン酸化活性に影響を及ぼさなかった。これらの結果から、肝実質細胞におけるAsAの肝実質細胞増殖促進シグナルは、IGF-I-RTKの下流からERK2の上流の間でα1及びβ2アドレナリン作動性増強を受けていることが示された。 -
L-アスコルビン酸及びその誘導体によるラット初代培養肝実質細胞増殖促進作用機構の検討
森 巧実、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
日本薬学会第133年会 日本薬学会
開催年月日: 2013年03月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:パシフィコ横浜
【目的】当研究室では、再生現象のin vitroモデル系としてラット初代培養肝実質細胞実験系を独自に開発し、いくつかの増殖因子(肝細胞増殖因子;HGFなど)について、肝実質細胞に対する増殖促進作用、増殖抑制作用あるいは増殖修飾作用などを詳しく研究してきた。一連の研究の中で、我々は、様々な培地に含まれるL-アスコルビン酸(AsA)が、肝実質細胞の増殖に対して大きな影響を及ぼすことを見出した。AsAは、近年、様々な種類の細胞に対して、細胞増殖促進・抑制作用を示すことが報告されているが、AsAによる肝実質細胞に対する増殖促進作用の詳細は報告されておらず、また、どのようなシグナル伝達経路が関与するのかは解明されていない。そこで本研究では、AsAによる成熟ラット初代培養肝実質細胞に対する増殖促進作用機構をDNA合成能及び核数を計測することにより検討した。
【方法】in situコラゲナーゼ還流法により、成熟ラットから肝実質細胞を単離し、初代培養を行った。細胞接着後、無血清培地に交換し、種々の濃度のAsA及びその誘導体、または特異的シグナル伝達因子阻害薬や増殖因子受容体に対する中和抗体を添加した。一定時間培養後、肝実質細胞のDNA合成能及び核数を計測した。
【結果及び考察】AsA及びその安定型誘導体であるL-アスコルビン酸2グルコシド(AsA2G)は、肝実質細胞に対して用量及び培養時間に依存して有意な増殖促進作用を示した。更に、その増殖促進作用は、AG1478、LY294002、PD98059、ラパマイシン及び抗IGF-I受容体モノクローナル抗体により各々抑制されたことから、AsAによる肝実質細胞増殖促進作用には、少なくともIGF-I受容体、受容体tyrosine kinase、phosphoinositide 3-kinase(PI3K)、MAPK/ERK kinase(MEK)、mammalian target of rapamycin(mTOR)が深く関与していることが示唆された。 -
ラット初代培養肝実質細胞におけるL-アスコルビン酸のIGF-I受容体チロシンキナーゼ及びMAPキナーゼ活性化に対する効果の検討
三上 翔平、茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
日本薬学会第133年会 日本薬学会
開催年月日: 2013年03月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:パシフィコ横浜
【目的】当研究室では従来から肝再生現象のin vitroモデル系としてのラット初代培養肝実質細胞実験系を独自に開発し、いくつかの増殖因子(上皮増殖因子;EGFや肝細胞増殖因子;HGFなど)について、肝実質細胞に対する増殖促進作用、増殖抑制作用あるいは増殖修飾作用などを詳しく研究してきた。一連の研究の中で、我々は、L-アスコルビン酸(AsA)に注目した。初代培養肝実質細胞に対して、AsAは、IGF-I受容体を介して細胞増殖促進作用を示すことを見出した。そこで本研究では、AsAによる成熟ラット初代培養肝実質細胞増殖促進作用を更に検証するため、IGF-I受容体チロシンキナーゼ(IGF-I-RTK)及びMAPキナーゼ(MAPK;ERK1/ERK2)のリン酸化をWestern blotting 解析法を用いて直接測定した。
【方法】AsAと特異的シグナル伝達因子阻害薬の共存下における初代培養肝実質細胞のIGF-I-RTK及びMAPK活性を、抗リン酸化IGF-I-RTK及びERK1/ERK2抗体を用いてWestern blotting 解析法にて測定し、そのリン酸化活性を比較検討した。
【結果及び考察】初代培養肝実質細胞をAsAで刺激すると、培養開始3~5分でピークとなる一過性のIGF-I-RTK及びERK2リン酸化活性の上昇が発現した。このAsAにより誘発されたERK2リン酸化活性は、AG1478,AG538,LY294002,PD98059により抑制された。一方、AsA誘発IGF-I-RTKリン酸化活性は、AG1478及びAG538にのみ抑制された。また、ラパマイシンはAsA誘発IGF-I-RTK及びERK2リン酸化活性に影響を及ぼさなかった。以上の結果から、AsAによる肝実質細胞の増殖促進シグナルは、IGF-I-RTK及びERK2のリン酸化を介して、核内に伝達されていると考えられた。 -
ラット初代培養肝実質細胞に対するビタミンCとその誘導体の増殖促進作用機構の検討
木村 光利、茂木 肇、荻原 政彦
第86回 日本薬理学会 年会 日本薬理学会
開催年月日: 2013年03月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:福岡国際会議場
We investigated the effects of Vitamin C (L-ascorbic acid) on DNA synthesis and proliferation, and its signal transduction pathways in primary cultures of adult rat hepatocytes. L-Ascorbic acid- and L-ascorbic acid 2-glucoside-induced time-, and dose-dependent increases in hepatocyte DNA synthesis and proliferation. The hepatocyte DNA synthesis and proliferation stimulate by 3 × 10-6 M L-Ascorbic acid, or 10-6 M L-Ascorbic acid 2-glucoside were significantly inhibited by anti-IGF-I receptor antibody, but not by anti-insulin receptor or anti-IGF-II receptor antibody. L-Ascorbic acid (3 × 10-6 M)-, and L-ascorbic acid 2-glucoside (10-6 M)-induced hepatocyte DNA synthesis and proliferation were blocked by AG1478(10-7 M), PD98059(10-6 M), LY294002(10-7 M), and rapamycin (10 ng/ml). L-Ascorbic acid (3 × 10-6 M) and L-ascorbic acid 2-glucoside (10-6 M) significantly increased phosphorylation of receptor tyrosine kinase (95 kDa) and p42 mitogen-activated protein (MAP) kinase. These data suggest that the proliferative signals for primary cultired hepatocytes induced by vitamin C (L-ascorbic acid) are mediated by IGF-I receptor and the receptor tyrosine kinase/MAP kinase signaling system.
-
ラット初代培養肝実質細胞における上皮成長因子によるMAPキナーゼ活性化に対するアドレナリン作動性調節機構の検討
茂木 肇、木村 光利、荻原 政彦
日本薬学会第132年会 日本薬学会
開催年月日: 2012年03月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:北海道大学
【目的】当研究室では、肝再生現象の解明の一端として、いくつかの成長因子(上皮増殖因子;EGFや肝細胞増殖因子など)の作用を、成熟ラット初代培養肝実質細胞系を用いて検討してきた。その結果、in vivoの正常な状態の肝臓では、きわめて低くしか発現していなかったアドレナリン作動性α2およびβ受容体が、肝実質細胞において、上記成長因子を添加して初代培養することにより発現してくることをはじめて報告した。さらにα1およびβ2作動薬は、単独では、肝実質細胞の増殖に影響を与えないが、上記の成長因子との共存下で、成長因子の増殖促進作用を増強させることも見出した。しかし、各成長因子のシグナル伝達機構とこれらのアドレナリン受容体作動薬のそれとの連関(cross-talk)についての詳細は不明である。そこで、α1、α2およびβ受容体を介する作用が、EGFのシグナル伝達機構のどの部分と相互作用をしているのかを、EGF受容体チロシンキナーゼ(RTK)およびMAPキナーゼ(MAPK)の活性を直接測定することにより、検討した。
【方法】EGFとα1およびβ2作動薬との共存下における初代培養肝実質細胞のRTKおよびMAPK活性を、抗リン酸化EGFR、ERK1、ERK2抗体を用いたWestern blotting 解析法にて測定し、その変化を比較検討した。
【結果および考察】初代培養肝実質細胞をEGF単独で刺激することにより、培養開始3~5分でピークとなる一過性のRTKおよびERK2活性の上昇が発現した。更にERK2活性はβ2作動薬の共存下で増強され、α1作動薬では影響されなかった。一方、α1およびβ2作動薬単独ではRTKおよびMAPK活性に影響を及ぼさなかった。これらの結果から、肝実質細胞におけるEGFの増殖促進シグナルは、RTKの下流からMAPKの上流の間でβ2アドレナリン作動性増強を受けていることが示された。 -
非環状型ビタミンA誘導体NIK-333のラット部分肝切除ラットモデルに対する肝再生促進作用に関する検討
木村 光利、茂木 肇、渡邊 真樹子、石橋 直人、柳田 真悟、荻原 政彦
第85回 日本薬理学会 年会 日本薬理学会
開催年月日: 2012年03月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:国立京都国際会館
The effect of an acyclic retinoid NIK-333 on the restoration of liver mass and recovery of liver function was compared with natural retinoids in 70% partially hepatectomized (PH) rats in vivo. NIK-333- and all-trans-retinoic acid (ATRA)-treated rats showed an about 1.2-1.3-fold increase in the ratio of liver weight (LW) to body weight (BW) over control rats on day 2 and 3 after PH. Accordingly, BrdU-labeling index in the regenerating liver was significantly higher in NIK-333- and ATRA-treated rats compared with control rats on day 1. In control rats, liver-related serum transaminases activities were rapidly elevated on day 1 and then decreased to preoperative levels on day 5 following PH. NIK-333 significantly lowered serum transaminases on day 1 after PH compared with control rats. The transaminases-lowering effect of NIK-333 was more effective than that of ATRA. In control, retinal did not significantly affect the LW/BW ratio, the BrdU labeling index, and serum transaminases compared with the control. These results demonstrate that of these retinoids, NIK-333 was the most potent in promoting the regeneration of liver mass and function with full recovery after liver regeneration.
-
ラット初代培養肝実質細胞における血小板由来成長因子によるMAPキナーゼ活性化に対するアドレナリン作動性調節機構の検討
茂木肇、木村光利、荻原政彦
日本薬学会第131年会(静岡) 日本薬学会
開催年月日: 2011年03月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:ツインメッセ静岡
【目的】当研究室では、肝再生現象の解明の一端として、いくつかの成長因子(上皮増殖因子:EGF や肝細胞増殖因子:HGF など)の作用を、成熟ラット初代培養肝実質細胞系を用いて検討してきた。その結果、in vivo の正常な状態の肝臓では、きわめて低くしか発現していなかったアドレナリンα2およびβ受容体が、肝実質細胞を上記の成長因子で初代培養することにより発現してくることをはじめて報告した。さらにα1およびβ2作動薬は、単独では、肝実質細胞の増殖に影響を与
えないが、上記の成長因子との共存下では、成長因子の増殖促進作用を増強させることも見出した。しかし、各成長因子のシグナル伝達機構とこれらのアドレナリン受容体作動薬のそれとの関連(cross-talk)についての詳細は不明である。そこでα1受容体応答が肝細胞の増殖を特に強く促進させる血小板由来増殖因子(PDGF)のシグナル伝達機構のどの部分と相互作用をしているのかを、MAP キナーゼ(MAPK)の活性を直接測定することにより、検討した。
【方法】PDGF とα1およびβ2作動薬との共存下における初代培養肝実質細胞のMAPK 活性を、抗リン酸化ERK1、ERK2抗体を用いたWestern blotting 解析法にて測定し、比較検討した。
【結果および考察】初代培養肝実質細胞をPDGF 単独で刺激することにより、培養開始3分後でピークとなる一過性のERK2活性の上昇が発現した。それらはα1作動薬の共存下で増強され、β2作動薬では影響されなかった。一方、α1およびβ2作動薬単独ではMAPK 活性に変化がなかった。これらの結果から、肝実質細胞におけるPDGF の増強シグナルは、MAPK の上流でα1アドレナリン作動性増強を受けていることが示された。 -
部分肝切除ラットにおけるグリチルリチンの肝再生促進作用に関する検討
茂木肇、木村光利、荻原政彦
日本薬学会第127年会(富山) 日本薬学会
開催年月日: 2007年03月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:富山
【目的】グリチルリチン(以下、GL)は、慢性肝疾患における肝機能異常を改善する目的で、現在、臨床の場で使用されている。従来、GLの肝庇護作用は、主に抗炎症作用によると考えられていたが、最近、その作用には肝実質細胞の増殖促進効果も関与していることが、成熟ラット初代培養肝実質細胞系で証明された。そこで今回、ラット肝再生に対するGLの作用について、70%部分肝切除モデル(in vivo系)を用いて検討した。
【方法】ラット(Wistar系、雄性)に70%部分肝切除術を施行し、術直後より、GLを1日1回腹腔内投与して、術後1-12日目における肝臓の再生割合をcontrol(生理食塩水投与)群と比較した。また、ラットの門脈より血液を採取し、血清トランスアミナーゼ(AST、ALT)活性値も測定した。
【結果・考察】部分肝切除後の肝重量の経時変化において、control群は術後5日目で約75%、GL投与群は術後3日目で約80%まで増加した。しかし、いずれも7日目にかけて肝重量が減少し、control群で65%、GL投与群で75%まで減少し、一時的な停滞期を示した。その後、再び増加して術後12日目にはほぼ肝切除前の重量に回復した。GL投与群の方が肝重量を増加させ、その差は術後3日目で最も大きかった。また、血清トランスアミナーゼ活性値において、control群のAST及びALTは共に、術後1日目をピークとする一過性の活性上昇を示し、7日目以降は共に約30IU/Lであった。これに対し、GL投与群では一過性の活性上昇がやや低下し、GLの抗炎症作用(肝機能改善作用)も弱いながらも認められた。以上の結果より、GLは70%部分肝切除ラットによる肝再生モデル実験において、術後早期から有意に増殖促進作用を示し、合わせて肝機能も早期に改善することが示された。 -
分岐鎖アミノ酸ロイシンによるラット初代培養肝実質細胞の増殖促進作用は腫瘍増殖因子αを介している
茂木肇、木村光利、荻原政彦
日本薬学会第126年会(仙台) 日本薬学会
開催年月日: 2006年03月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:せんだいメディアテーク
【目的】当研究室では、肝再生現象の解明の一端として、いくつかの成長因子(上皮増殖因子や肝細胞増殖因子など)の作用を、成熟ラット初代培養肝実質細胞系を用いて検討してきた。その一連の研究の中で、我々は、分岐鎖アミノ酸のleucineに上記成長因子様の肝細胞増殖促進作用を有することを見出した。しかし、leucineがどのようなメカニズムで肝実質細胞の増殖を促進させるのかは不明であった。そこで、本研究では、分岐鎖アミノ酸が、肝実質細胞のオートクライン因子で、肝細胞増殖促進作用のあるTGF-αの培養液中への分泌に及ぼす影響を観察し、初代培養肝実質細胞に対するleucineの増殖促進機構を検討した。
【方法】麻酔下のラットの肝臓をin situコラゲナーゼ還流することにより肝実質細胞を単離し、初代培養を行った。細胞接着後、conditioned medium に交換し、一定時間、種々の分岐鎖アミノ酸などで肝実質細胞を刺激した。その後、conditioned medium中のTGF-αをELISA assay kitを用いて定量した。
【結果および考察】leucineの肝細胞増殖促進作用は、抗TGF-αモノクローナル抗体の共存下で、用量依存的に抑制された。一方、leucineの作用は、抗IGF-Iモノクローナル抗体の影響は受けなかった。さらに、conditioned medium中のTGF-α濃度は、leucineの添加により、時間依存的に有意に増加した。一方、isoleucine、valineは、TGF-αの分泌にはほとんど影響を及ぼさなかった。また、leucineの肝実質細胞に対するTGF-α分泌促進活性は、U-73122、somatostatinおよびverapamilで抑制された。以上の結果から、初代培養肝実質細胞において、leucineの肝細胞増殖促進作用は、leucine 受容体/Gタンパク質/PLC/Ca2+系を介し、内在性のTGF-αを分泌することにより引き起こされるものと考えられる。 -
マウス摘出回腸に対するピペリン-シクロデキストリン包接複合体の収縮抑制作用に関する研究
稲垣 友季子、柏葉 希奈美、松本 奈実子、恵沢 敏成、栗原 一樹、茂木 肇、荻原 政彦、井上 裕、木村 光利
第64回日本薬学会関東支部大会 日本薬学会関東支部
開催年月日: 2020年09月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:オンライン
【目的】胡椒に含まれるピペリン(PP)は、腸管の蠕動運動を抑制するとして、過敏性腸症候群などの新しい治療薬として期待されている。しかし、PPは難溶性のため、製剤的な工夫が必要である。水への溶解性を高める方法の一つにシクロデキストリン(CD)を用いた包接が挙げられる。CDは、構成するグルコース分子数に応じて、6つのα型、7つのβ型、8つのγ型に分類することができる。本研究では、CDにより包接されたPPが及ぼす腸管収縮抑制作用について、その影響を検討するため、腸管マグヌス法を用いて検証した。
【方法】ddY雄性マウスから摘出した回腸をタイロード液が入ったオルガンバス内に懸垂し、カルバコールで回腸を刺激した。その後、PPやその包接体を添加し、回腸収縮高を測定した。なお、PPの各包接化合物は混合粉砕法(GM)および共沈法(CP)により調製した。
【結果および考察】GM により包接されたPP-CDの腸管収縮抑制率はそれぞれα型が36%、β型が32%、γ型が28%とどれも有意な抑制を示した。更に、α型においてCPにより包接されたPPの抑制率は、62%とGMよりも顕著な上昇が認められた。これにより、PPのCD包接には、グルコース分子数が少ないα型が適していると考えれる。 -
ミグリトール-シクロデキストリン包接化合物の血糖上昇抑制効果に関する検討
田中優弥、栗原一樹、内藤浩太、茂木肇、荻原政彦、木村光利
第62回日本薬学会関東支部大会 日本薬学会関東支部
開催年月日: 2018年09月
記述言語:英語 会議種別:ポスター発表
開催地:帝京平成大学
【背景・目的】臨床では、血糖上昇抑制薬としてα-グルコシダーゼ阻害薬のミグリトール(miglitol : 以下MTと略す)が、主に食後高血糖を改善する目的で用いられる。投与されたMTの大部分は小腸上部で吸収されるため、小腸下部でのα-グルコシダーゼ阻害作用は減弱する。そのため、食後血糖値推移のピークが現れる時間を遅らせるという特徴を持つ。
シクロデキストリン(cyclodextrin、以下CDと略す)は、複数のグルコースがα-1,4結合した環状のオリゴ糖であり、その空洞中に様々な分子を取り込むことで包接化合物を形成することができる。CDには、結合するグルコース数の違いからα-CD、β-CD、γ-CDなどが存在し、構造の違いから消化性や水溶性などの物性が異なる。α-CDは、多糖類やオリゴ糖類による血糖上昇を抑制する作用があり、糖として腸管から吸収されることはない。一方γ-CDは、α-アミラーゼによって分解され、グルコースとして小腸から吸収されることが知られている。
上記の背景から、本研究ではマウスに対するin vivo経口糖負荷試験を行い、α-CDおよびγ-CD単独並びに包接されたMTが糖負荷による血糖値の変動に与える影響について検討した。
【方法】一晩絶食させたddYマウスにスクロースと各薬物(MT、α-CD、γ-CD、包接化合物)の混合液を経口投与し、投与直後から180分まで経時的に尾静脈から採血し、血糖値を測定した。
【結果・考察】今回の研究結果では、低用量のMT(3 mg/kg)をα-CDで包接することで、高用量のMT(10 mg/kg)単独とほぼ同等な血糖上昇抑制作用が得られた。この結果から、MTの投与量が減量でき、肝、腎機能が低下している患者への投与におけるリスクを減少させることが期待できる。一方、γ-CDを用いた実験では、包接型(MT/γ-CD)は、MT単独群と同様に血糖値ピーク時間をcontrol(スクロース単独投与)群よりも後方に移動させたが、MT単独群と比較し、血糖値に明らかな差は認められなかった。このことから、包接型(MT/γ-CD)は、投与後、γ-CDが速やかに分解されることで、MTの包接による徐放効果が得られなかったのではないかと考えられる。 -
オキセサゼイン-γシクロデキストリン抱接化合物のマウス摘出回腸に対する収縮抑制作用に関する研究
金井 里紗、茂木 肇、木村 光利、井上 裕、金本 郁男、荻原 政彦
第59回日本薬学会関東支部大会 日本薬学会関東支部
開催年月日: 2015年09月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:日本大学薬学部
【目的】オキセサゼイン(OXZ)は、過敏性腸症候群などに用いられる局所麻酔薬である。その作用はプロカインの4000倍と高力価であるが、欠点として水に難溶である。水への溶解性を高める方法の一つにγシクロデキストリン(γCD)を用いた包接が挙げられる。OXZは、γCDと抱接化合物を形成し、体内に入るとミセル化され吸収される。また、しかし、OXZ-γCD包接化合物による実際の腸管に対する作用は、未だ証明されていない。そこで、本研究では、マグヌス法を用いて、Ach及びBa誘発腸管収縮反応に対するOXZ-γCD抱接化合物の効果を検討した。
【方法】一昼夜絶食させたddy雄性マウスから摘出した回腸を標本として、それをタイロード液が入ったオルガンバス内に懸垂し、Ba2+及びAChで回腸を刺激した。その後、被験薬を添加し、回腸収縮高を測定した。被験薬は各包接化合物調整法別(共沈法(CP)、混合粉砕法(GM)、物理的混合(PM))の溶出試験により得られた溶出液を使用した。
【結果・考察】Ba2+に誘発した回腸収縮反応は、CP、PM、GP共に溶出時間に依存して抑制が見受けられ、特にCPでは顕著であり、溶出時間30分において収縮率が30%まで有意に低下した。この反応はAChによる回腸収縮反応でも同様な傾向が認められたが、包接化合物の収縮抑制効果はBa2+刺激の方が強かった。Ba2+は細胞内Ca2+濃度を上昇させ、平滑筋の収縮を促進するといわれており、OXZは直接細胞内のCa2+流入を抑制していることが考えられる。