科研費(文科省・学振)獲得実績 - 吉田 裕亮
-
非可換確率空間における分布特性量の変形と独立性の対応
研究課題/領域番号:20K03649 2020年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
吉田 裕亮
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
本研究課題では, 非可換確率空間における独立性の概念を Fisher 情報量やエントロピーなどの分布特性量の視点から捉える新たな手法の開発を目指している. 本研究課題は独立性の変形と分布特性量を変形の対応に着目して, まず自由独立性と通常独立性を補間する q-変形独立性に関して, 特性量の変形が如何に振舞うかを Meixner 分布族をテスト分布として具体的に調べることから開始された.
令和 3 年度は, これまでの q-変形に, さらに変形パラメータを加えた 2 係数 (q, s)-変形 Fock 空間上の変形 Poisson 分布に関する研究を愛知教育大の淺井氏と共に行ない, 研究成果を学術雑誌に投稿を行った. この (q, s)-変形 Fock 空間の生成・消滅作用素の交換関係で特徴的なことは恒等作用素が s-変形することで qs-交換関係が構成され, 対応する変形 Poisson 作用素が q-個数作用素と s-変形恒等作用素を用いて構成されることになる. さらにこの (q,s)-Fock 空間上の作用素構成法により同変形 Poisson 分布の高次モーメントの組合せ論的表示も同時に発見している.
また本研究課題と関連する非可換確率論分野の研究として, 自由独立性の下での古典ベータ分布族の自由類似に関連して, この自由類似と自由群の表現論との潜在関係の解明への鍵が名古屋大の山上氏との研究討議において発見された. これに関しては, 現在, 有限階数摂動法を用いて精査し, 学術論文への投稿を目指して取り纏めを行っている.
加えて 令和 3 年 11月に名古屋大学においてハイブリッド開催された研究集会「非可換確率論とその関連分野 2021」にはオーガナイザの一人として参画し, 国内の関連研究者の最新の研究動向の調査も行った. -
非可換確率空間におけるフィッシャー情報量とエントロピーの変形に関する研究
研究課題/領域番号:26400112 2014年04月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成金 基盤研究(C)
吉田 裕亮
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
本研究においては, 非可換確率空間における独立性に呼応した量子変形エントロピー・Fisher 情報量の研究を行った. Fisher 情報量の変形においては, スコア関数に着目し, ポテンシャル関数による独立性対応を調べた. 特に, 自由独立性での第 2 種ベータ分布ならびに F-分布 および t-分布等の自由類似分布の導入に成功し, Fisher 情報量の独立性に呼応した変形を捉えることが可能となった. さらに, 成分間に相関のある場合のランダム行列のスペクトル極限分布のゆらぎを厳密に与え, それらを統計的データ解析に応用することにも成功した.
-
非可換確率空間における確率分布の変形に関する研究
研究課題/領域番号:21540213 2009年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(C)
吉田 裕亮
-
非可換確率空間における独立性の変形と変形フォック空間に関する研究
研究課題/領域番号:17540190 2005年04月 - 2009年04月
日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(C)
吉田 裕亮
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
本研究では, 非可換(量子)確率空間における独立性の変形をモーメント・キュムラント関係式の変形と捉えることにより, 順序集合の分割統計の理論と確率分布の変形理論との関係, さらに構成された変形独立性を実現する非可換確率空間のモデルをフォック空間の変形で与える研究を行った.
-
非可換確率空間における独立性の変形に関する研究
研究課題/領域番号:14540201 2002年04月 - 2005年03月
日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(C)
吉田 裕亮
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
通常の確率空間においては、その空間上の有界な確率変数のなす関数環と期待値写像の組を考えると、この組は元の確率空間を復元するに足る情報が含まれている。このとき、この関数環は可換である。このことより、関数環を非可換化することにより、非可換確率空間は与えられる。通常の独立性の概念を、非可換確率空間にどうにゅうすることは可能であるが、こえはテンソル積に基づくもので、独立な確率変数は互いに可換であるということになり、非可換性が反映されたものではない。Voiculescuにより、導入された自由独立性は、真に非可換性が反映された独立性の概念のひとつである。独立性が混合モーメントの計算則を与えるものと考えると、ある種の公理の下では非可換確率空間の独立性としては、通常の独立性、自由独立性、ブール独立性の3種類しか得られない。しかし独立性の概念は合成積を定め、合成積はモーメント-キュムラント公式を導くことに着目して、本研究ではモーメント-キュムラント公式の変形で独立性ん変形を捉えることにした。
自由独立性とブール独立性を補間する幾つかの変形自由合成積に関するs-自由,r-自由合成積の研究を行った。特に、それぞれの変形に対応したガウス分布、ポアソン分布の研究を行い、s-自由変形の場合にはs-変形フォック空間を構成し、その生成作用素、消滅作用素を用いて、s-自由ガウス型確率変数、s-自由ポアソン型確率変数を与えた。さらに、よく知られたボゾン・フォック空間とフェルミ・フォック空間を補間するq-変形に関してそれを一般化し2パラメータ変形への拡張を行った。(q,t)-変形ならびに(q,s)-変形について、交換関係を記述する、それぞれの変形に対応する集合の分割統計に関する研究を行った。さらに、もっと一般化された自由変形合成積であるBozejkoにより導入されたΔ-自由合成積に関して、非交叉分割上の過重関数を与えることに成功した。この過重関数は非交叉分割上の一般的な分割統計を与えるものであることが示唆された。 -
合流超幾何微分加群に関する研究
研究課題/領域番号:09440052 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
真島 秀行, 岩崎 克則, 浅本 紀子, 吉田 裕亮, 高山 信毅, 木村 弘信, 三宅 正武
配分額:7100000円 ( 直接経費:7100000円 )
1.合流超幾何微分方程式で定められるD-加群の射影分解の計算,解複体のコホモロジー群の計算について,高山の計算代数解析ソフトKanが与えてくれたD-加群の射影分解からヒントを得て,結局はKoszul複体的な発想である一群のD-加群の射影分解を一般的に与えるアルゴリズムを得,正則関数の芽の層,形式べき級数の芽の層,Gevrey評価付きの形式べき級数の芽の層,に値をとらせた解複体のコホモロジー群の計算もn変数の場合にできた.
2.合流超幾何関数のパラメータが特殊なものと一般エアリー関数との関係が明らかになり,(多変数)一般エアリー関数の変数を制限したときの漸近挙動が分かるようになってきた.
3.多変数関数の漸近解析における消滅定理の構成を用いて,多変数の非同次偏微分方程式系の発散解に関する近似公式が得られた.
4.漸近解析における消滅定理の応用としては,有理接続に伴う複体のコホモロジーに関する同型定理がある.Asymptotic Analysis for Integrable Connections with Irregular Singular Points, Lecture Notes in Math.1075, Springer-Verlag, (1984)の第4章に示しておいた同型定理を多少翻訳することにより,特異点では平坦な無限回微分可能な関数の芽の層に値をとらせたコホモロジー群とも同型であることが言え,それを基礎とし,リーマンの周期関係式の類似として,ベッセル関数に関するLommelの公式やガンマ関数の相補公式などの拡張を意味する合流超幾何関数に対する2次関係式を導出する理論を構成した. -
既約作用素因子環の構成に関する研究
研究課題/領域番号:07640180 1995年04月 - 1996年03月
文部省 科学研究費補助金 一般研究(C)
吉田 裕亮
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
本研究では有限次元フォン・ノイマン環の4つの組のなすcommuting squareに関する研究を行った。これは新たな規約作用素因子環を構成する重要な役割を果たす。有限次元フォン・ノイマン環のなすcommuting squareは2部グラフの4つの組に接続と呼ばれる構造が付加されたものである。この接続が平坦であるとき非常に良い性質を持っていると考えられる。この接続は統計力学の格子模型ではボルツマン重みを考えていることに相当する。格子模型で可解である十分条件の一つに対応するYang-Baxter関係式と先のcommuting squareの関連を中心に研究を行った。特に初期commuting squareから生成される2重増大列において縦方向と横方向の両方向にYang-Baxter関係式が成り立つとき、一つのグラフに基づいて統計力学模型で作られるYang-Baxter作用素の拡張版が定義できることが分かった。これに基づき格子模型の方で行った議論と平行して新たな絡み目の不変量なども導けることが分かった。これは今まで得られている絡み目多項式の拡張にあたるので真に強力な不変量になる可能性を持っていると言える。現在のところこのように縦横両方向にYang-Baxter関係式の成り立つcommuting Squareの候補がいくつか得られているので、今後はこれらから導かれる絡み目多項式が真に強力なものであるか否か等を考究する必要があると思われる。また上記の研究概要については関連研究集会で発表を行った。
-
点過程の方法による多変数確率過程の研究
研究課題/領域番号:07640284 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(C)
笠原 勇二, 小野 薫, 塚田 和美, 吉田 裕亮, 真島 秀行, 小山 敏子
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
・条件付きのtrimmed sumの極限定理:確率変数の列において、サンプルの中から大きさの大きい順に一定数のサンプルを除外した残りの和をtrimmed sumというが、除外サンプル値が一定の値を越えた時のみ除外した同様な和をconditionally trimmed sumという。除外サンプル数と条件のレベルをどうように設定すれば正規近似が可能かを調べた。点過程の考えを用いらことにより見通しのよい証明が得られ、また関数型極限定理への移行も容易である。
・fractional Brownian motionの滞在時間の極限に関する研究:fractional Brownian motionは自己相似性と正規性をもつ確率過程であるが、その滞在時間の極限定理に関する研究を行った。極限分布はMarkov過程の時に得られる分布群(Mittag-Leffler分布)にある意味で近いが、同じにはならないことと、この分布群の極限は指数分布であることを示した。
・漸近解析における消滅定理:Gevrey評価より詳しい係数の評価を課した漸近解析における消滅定理を示し、非斉次線型常微分方程式の形式解の係数に関する漸近評価に応用のあることを述べた。
・リーマン多様体に関する研究:リーマン多様体として既約であるnaturally reductive homogeneous spaceが全測地的超曲面をもてば定曲率空間であることを証明した。 -
有限次元環の可換図式から構成される既約部分作用素因子環
研究課題/領域番号:06740102 1994年04月 - 1995年03月
文部省 科学研究費補助金 奨励研究(A)
吉田 裕亮
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
本研究では有限次元フォン・ノイマン環の4つの組のなすCommuting Squareの新たな例を構成することを行った.これにより既約部分因子環のJones indexの新たな系列を構成した.この構成に用いたグラフの組は等スペクトルグラフの対ある.Jones indexはグラフの最大スペクトルの2乗で与えられ,今までの構成例では最大スペクトルのみが一致するグラフの組で構成する方法が取られてきたが,本研究ではすべてのスペクトルが一致する位相的に同値でないグラフの組を用いる方法で行った.その結果3重点障害が発生するグラフ,すなわちグラフのノルムが2よりも大きく位数4のループを持たないようなグラフ,でも貼り合わせを鏡映でなく,捻って貼り合わせることにより3重点障害が解消される例を与えたことになる.鏡映で貼り合わせることは有限次元フォン・ノイマン環の組では基本構成(Basic Construction)と呼ばれる環の拡大に相当する.したがってこのように捻った貼り合わせがどのような拡大にあたるかを具体的な例で計算を行った.またさらに先に用いたグラフ以外の等スペクトルグラフの組でもCommuting Squareが構成可能であることを示唆する数値計算の例もいくつか得られた.はじめに述べた結果については国内で開催された研究会で発表し研究会報告集に収録済みである.また国際欧文雑誌への投稿も終え,現在編集者側と連絡協議を行っている.
-
Bessel関数系とJonesの指数理論
研究課題/領域番号:06221228 1994年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究
真島 秀行, 浅本 紀子, 吉田 裕亮
配分額:3000000円 ( 直接経費:3000000円 )
OcneanuはDynkin図形A_nなどに対応してJonesの指数をもつsubfactorがあること、そして、その指数がDynkin図形のCoxeter数m=n+1をもちいて4cos^2π/mと表せることを示した。一方、不確定特異点をもつ線型微分方程式の分類理論でいう不変量がBesselの微分方程式に対して-4cos^2πνとなり、ν=1/nとして符号を反転するとII_1-factorのJones指数となることから、これらの間にはなにか深い関連があるものと考えられる。一般Airy関数系と4cos^2π/mをJonesの指数にもつsubfactorとの関連を明らかにすること、すなわち、一般Airy関数系とJones代数の間の公式レベル以上の関連、すなわち、構造的な関連を明らかにすること、一般Airy関数系とDynkin図形A_nの間の関係を明らかにすることを目的としている。一般Airy関数系の積分表示を手掛かりにして、resurgentな観点からnが小さなときの関連は分かった。
表・公式集をデータ・ベース的に整備することもすこしずつではあるが行っている。